奈良博で開催中の、
生誕800年記念特別展「忍性―救済に捧げた生涯―」へ行ってきました。
奈良生まれの名僧、忍性。
鎌倉時代、西大寺の叡尊を師として律宗の興隆に努め、戒律の復興と弱者救済に奔走しました。その生誕800年を記念し、ゆかりの寺院の名宝・文化財を一堂に集め、その偉業を偲んだ展覧会。
「忍性」さんは「叡尊上人」とほぼセットで、お名前だけはよく耳にしていました。でも、奈良倶楽部のご近所にある「北山十八間戸」を建てた、救済に尽くした方くらいの認識で、実はあまりよく知らなかったのです。
奈良博HPによると・・・
良観房忍性りょうかんぼうにんしょうは、建保5年(1217)に大和国城下郡屏風里(現在の奈良県磯城郡三宅町)で生まれました。早くに亡くした母の願いをうけて僧侶となり、西大寺の叡尊えいそんを師として、真言密教や戒律受持の教えを授かり、貧者や病人の救済にも身命を惜しまぬ努力をしました。特にハンセン病患者を毎日背負って町に通ったという話(『元亨釈書』等)には、慈悲深く意志の強い忍性の人柄がうかがえます。
後半生は活動の拠点を鎌倉に移し、より大規模に戒律復興と社会事業を展開しました。人々の救済に努めた忍性に、後醍醐天皇は「菩薩」号を追贈されました。
来年2017年は忍性の生誕800年にあたります。本展では忍性ゆかりの寺院に伝わる名宝や文化財を一堂に集め、奈良生まれの名僧の熱い人生とその偉業を偲びます。
ということで、よく知らなくても、奈良博の展覧会にあげられると、非常に詳しくわかりやすく、それも圧倒的なボリュームと濃い内容と高いレベルで(←奈良博べた褒めですが)自分の中に入ってくるので、これも楽しみに、たっぷりの時間の余裕をもって、展覧会場に臨んだのでした。
そして、もちろん今回も大満足の充実した展覧会でした。
不覚にも、会場で上映されている忍性さんを紹介する子ども向けアニメにうるっとしたくらい・・・まさか自分が奈良博の中で涙するとは思っていなかったですが。
「すべては、母からはじまった。」
このキャッチコピーの意味も心にすとんと落ちました。
「金剛仏子叡尊感身学正記」によると・・・
忍性は信心深かった母の願いで僧の姿となり、母亡き後、最初は故郷の近くの額安寺で修行に励み、母の供養のために文殊供養を遂げようとしていた。
西大寺中興の祖・叡尊に出会い、出家をしてその功徳を母に送ればいいと勧められるも、はっきりした答えをせずに帰っていき、翌春に、非人宿で文殊供養をした後に出家をした・・・など、若き日の忍性の姿が叡尊の自叙伝に記されています。
その他に、忍性は自分自身が学問の器ではないと考え、興法利生に励んでいたが、他の僧侶から律などに関する質問を受け、それに自分が答えられたことから、西大寺の修学に意味があったと気付いた。・・・などが書かれていて、どちらかというと、学問に苦手意識があったことも、謙虚な人となりをつくっているのではと感じました。
良観房(忍性)は慈悲が過ぎたという評価もあったそうです。
さて、忍性の心の背景にも目を配られた展覧会ですが
忍性ゆかりの寺院に伝わる名宝や文化財が一堂に展示されていて、これがまた大変素晴らしいのです!!
チラシから写真をいただいて少しご紹介します。
忍性が鑑真和上の生涯を鎌倉の絵師に描かせた「東征伝絵巻」(唐招提寺蔵)は、全5巻を前期後期に分けて全場面が公開されています!(鑑真和上への思慕が伝わりますね)
国宝「鉄宝塔」(西大寺所蔵)と
重文「金銅火焔宝珠形舎利容器」(海龍王寺所蔵)↑
展示期間が7/26~8/11ですが、般若寺「文殊菩薩騎獅像」↓
関東の寺院からも素晴らしい御像が出陳されています。
茨城・観音寺「如意輪観音菩薩坐像」↑(左上)
美しく流れる波状の模様の衣などが特徴の清凉寺式の「釈迦如来立像」
鎌倉・極楽寺(左)/茨城・福泉寺(右)↑
極楽寺本尊・釈迦如来立像に随侍する、重文「十大弟子立像」↑
「文殊菩薩坐像」極楽寺↑
忍性の骨を納めた骨蔵器3点
左:奈良・竹林寺/中:鎌倉・極楽寺/右:奈良・額安寺
87歳の生涯を閉じた忍性の遺骨は、若年の思い出の額安寺、行基菩薩ゆかりの竹林寺、そして晩年を過ごした極楽寺に三分され埋葬されます。忍性の分身である三つの骨蔵器が一か所に揃うのは史上初です。
その他に、かつて額安寺所蔵だった「文殊菩薩坐像」や「虚空蔵菩薩坐像」もいらっしゃって、数年前に額安寺にて拝観させていただいたことがあったので、何とも懐かしい気持ちでした。
(額安寺のブログ内過去記事はこちら→
★ ★)
また、奈良時代の「額田寺伽藍並条里図」(国宝)も眼福でした。
忍性さんの生涯がよくわかり、その偉業に触れ、心も洗われるような展覧会でした。お奨めです!
博物館からの帰りに「北山十八間戸」にも寄ってみました。
奈良倶楽部から般若寺の方へ徒歩10分のところにあります。
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生誕800年記念特別展「忍性―救済に捧げた生涯―」
会期:2016年7/23~9/19
会場:奈良国立博物館 東新館・西新館
休館日:毎週月曜日 ※ただし8/8・8/15・9/19は開館
開館時間:9:30~18:00
※毎週金曜日と8/6~8/15は19時まで開館
※入館は閉館の30分前まで
※7/30・7/31は子ども無料日(中学生以下は無料/同伴者は団体料金で)
最後におまけの画像>>
奈良博の池で行水中の鹿たち。
何やら相談して、足並みそろえて進んで行くも、途中で三方向へと。
何を相談して行動しているのかなぁと気になりました。