今年もたくさんのお客様にご宿泊いただきました。
年の瀬に今年一年を振り返って・・・
一年の間に何度もお越しいただくリピーターさんや、長くブログを愛読して下さってようやくお泊りできましたというお客様や、かなり以前にご宿泊して10年・20年・25年以上ぶりというお客様も多くいらっしゃって、長く続けてきたおかげで繋がるご縁をいただいた一年でした。
今年も、多くのお客様方に支えられ励まされて奈良倶楽部を続けてこられ、感謝の気持ちでいっぱいです。
本当にどうもありがとうございました。
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個人的なことですが、9月に父を見送り、その後ひとりになった母をきょうだいみんなで気にかけて、それぞれが空いた時間を母のもとで過ごすということが多くなりました。
そんな訳で、出かけて見たり感じたことをブログに綴ることが少なくなったのですが、でも、いつもの風景から遠ざかったからこそ、しみじみと「奈良」の風景を心に感じることができ、奈良の自然に慰められたようにも思いました。
ちょうどその頃に、「奈良旅手帖」の別冊冊子に掲載されるコラムの締切があり、少し書かせていただきました。今の想いも変わらずにいますので、一年の最後にここに記しておこうと思います。
東大寺境内の北のほうでホテルを始めて、29年になろうとします。
開業当時は、今ほど境内散策をするでなく、近くに住みながらも東大寺は特別で立派でハレの存在だったように思います。
振り返って思い出すのは、大きな災害の後のすべての宿泊予約がキャンセルになった1995年1月のこと。仕事がなくなり空いた時間をどう過ごしていいのか。手持無沙汰のまま、飼い始めて3か月過ぎの子犬の散歩と称して、一日に何度も東塔跡の雑木林や講堂跡に歩きに出かけたのでした。
冬の雑木林や芝は彩りも乏しく寂しく見えるのだけれど、誰もいない空間でカサコソと枯れ葉を踏みしめて歩くのがそのうちに楽しくなり、じぃっと地面を見て歩いていると、確かに季節は動いていると感じるようになるのでした。
目を凝らして木々を眺めてみると、桜の幹は銀色に発色しているようで、その薄い銀色の下にははっきりと桜色を感じることができたのです。冬枯れの季節の向こうには確かに芽吹きがやってくると希望を感じたのでした。
春になって仕事もようやく回復に向かい、また忙しくて時間を作れないようになっても、朝早くや夜遅くの時間に「ちょっとそこまで行ってきます」と境内の豊かな自然の中へ。
移りゆく季節ごとの散策の楽しみも覚えて、いつの間にか、東大寺境内散策は「暮らしの中の非日常」なひとときとなり、今も心をリフレッシュさせてくれるのです。
緑深い講堂跡や、木々の木立が美しい東塔跡。
大仏殿のすぐそばで奏でられる四季折々の自然の美しさ。奈良に流れる時の流れや歴史の重みにも想いを馳せて、これからも「奈良」という時間の中を歩いていきたいと思います。
トップの画像は、土井志清さん作の奈良一刀彫・干支の戌。
奈良倶楽部館内もすっかり迎春準備を整えております。
では皆さま、どうぞ佳いお年をお迎えくださいませ。
そして2018年、新しい年もどうぞよろしくお願い申し上げます。