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2018年7月31日火曜日

散歩で見つけた気になる欠片たち*

 光の欠片・・・昨夕↑と今朝↓の陰影。

三頭一列等間隔の法則。

龍松院の前に咲く臭木の花。
名前を知らなかったら、清楚な姿に涼を感じるのですが。
この時間のちょうど一週間前は、大勢の参拝客で賑わっていたであろう、知足院への石段に降り注ぐ蝉しぐれと木漏れ日と葉陰と。
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二月堂さんまでの朝散歩。
朝6時台はまだそれほど暑くもなく、気持ちのいい散歩となりました。

2018年7月30日月曜日

二月堂夕景*

燃えるような真っ赤な夕焼けをSNSなどで見ると「私も今すぐ二月堂まで飛んでいきたい!」と思うのですが、そんな時に限って出かけられずにもどかしく。時間の都合がついた日はそれほど焼けずと、中々タイミングが合わない二月堂夕景。
7月30日。焼けてくれると嬉しいなと少しの期待を胸に二月堂まで。
生駒山の稜線が北に伸びる、そのなだらかな美しい線。
その稜線の内側には低層の山々が幾重にも重なって、山々のこちら側には奈良の町が夕陽に照らされてオレンジ色に輝いています。
日没までまだ1時間弱。少し座って待っていましょう。
二月堂舞台の欄干から見える大仏殿。
切り取って見える景色が額装されているようでもあり
角度を変えれば、光芒が見えたり。
刷毛でさっと引いたような雲の美しいこと。
今日は空一面が真っ赤にもえることはないだろうけれど、儚げで柔らかな雲の形と穏やかな空の色に気持ちも和んできます。
長い時間、空を見ているだけでしたが見飽きないのが不思議です。
19時少し前に山の端に沈んでいく太陽。
この頃には大勢の人が同じ夕陽を眺めておりました。

落陽と共に、堂内の灯籠に明かりが灯り
人の気配も引いていきます。
静かな二月堂を後にして
裏参道で名残の夕焼雲を捕まえておりました。
どんな空の色でも、この場所から望む奈良の空が好きです。

2018年7月29日日曜日

久しぶりの境内散策*

7月27日  猛暑が続いて中々出かけられず、気になっていた「功徳日およく」の万灯明をお願いしに二月堂さんまで。
登廊の石段は、熱中症予防と称してずっとクーラーの中で過ごしていた足腰にはきついと喘ぎながらの、久しぶりのお参り散歩です。
不動堂からいつものコースで、もう百日紅が咲いているかなと
三月堂へ。車で走っていても、今年は百日紅の花をあまり見かけないと、何となく感じていたのですが
 何本かある木のうち、花が咲いていたのは一本だけ。
それもそんなにたくさん咲いていないし・・・。
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7月28日 解除会。
お昼の休憩時間。台風の進路が気になりながらも、まだお天気は崩れず、自転車で風が気持ちいいと大仏殿まで走りました。
 道中、もうギンナンがたわわに生っているのを見つけて驚きながら
大仏殿では、今年前半の色々あった諸々の罪穢れを祓い給えと茅の輪をくぐりました。外国の方達も見様見真似で茅の輪くぐりを。
そしてその後は、今日の目的の一つでもあるこちらの展覧会へ。
「東京藝術大学が育む文化財保護の若き担い手達」展 
仏像制作について知識のない者にも大変わかりやすく解説された展示で、とても面白かったです。(8/7まで本坊で)
本坊のお庭には蓮の花が涼しげなようすで咲いていました。
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昨日、三月堂前で見た百日紅の花の少なさが気になって、帰りは境内の百日紅スポットを要チェックしてみましたが・・・
大仏殿鏡池の前の百日紅↑も、講堂跡の百日紅↓も、花が咲いていない 木の方が多く、これはいったいどうしたことなのでしょう・・・。
酷暑が続いたせいなのでしょうか?奈良公園の浮雲園地や浮見堂などの百日紅スポットもまた見にいくことにしましょう。
・・・と、二日続けて出かけた東大寺境内。
久しぶりに、日常を綴ったブログになりました。
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<<おまけの画像>>
今日の寄り道は境内・鐘楼のそばの「鹿鳴園」さんでかき氷。
お店に入る前に、お店から出てこられた写真家の三好さんにばったり。
ちょうど本坊の「東京藝術大学が育む文化財保護の若き担い手達」展 で、この展覧会のポスターにも使われている「執金剛神立像」の復元彩色映像を見てきた後だったので、この豪華絢爛な極彩色が今もまだ残っているところを三好先生が撮影された写真を、先日の展覧会で拝見したからこそ、”極彩色”が 1300年の時空を超えて現在に繋がるというリアルを感じることができたと、お伝えしました。
いつもの徳島弁で「ほ~か、ほ~か」と喜んで下さって記念写真も。
「鹿鳴園」さんでは貴重なDVDもお借りして、楽しい境内散策となりました。ありがとうございました。

2018年7月28日土曜日

8月のお出かけ情報②〜寺社伝統行事:前半

8月は寺社の伝統行事や年中行事、お盆の行事も多く
前半・後半に分けてご案内いたします。
まずは8月前半、お盆までの行事をどうぞ。
◇8/1~8/15 9:00~16:00 大安寺盂蘭盆精霊会
期間中、諸大寺の高僧や著名人の染筆の灯篭を掲げお盆施餓鬼供養会を行います。
問合せ:0742-61-6312

◇8/1~8/7 5:30~ 矢田寺舎利会
問合せ:0743-53-1531

◇8/2~8/3 天川村「洞川温泉行者祭り」
大峯山開祖の役行者が冤罪で島流しになり、後に無罪となって
大峯山に戻った時、熱狂的に村民が出迎えた様子を表したお祭り。
ひょっとこ踊り、鬼踊り行列などがある大峰山随一の奇祭。
問合せ:0747-64-0333(大峰山洞川温泉観光協会)

◇8/4  8:30~ 西大寺「本願称徳天皇御忌」
西大寺本願称徳女帝の忌日法要。
問合せ:0742-45-4700

◇8/4 10:00~ 杉箸神社「祭典(箸供養)」
杉箸神社は、箸の神様として知られるシラハシの翁が祀られ、日本でも珍しい箸をご神体とする神社です。昭和25年以来毎年行われているこの祭典では、割箸への感謝と杉箸業界の発展を祈願し、祝詞奏上のあと玉串が奉納されます。
問合せ: 0747-52-0001(下市町役場)

◇8/5 9:00~ 千光寺「滝祭り火渡り修業」
お滝行と火渡りを参拝者が参加できる。
問合せ:0745-45-0652

◇8/5 11:00~ 金峯山寺「本地堂供養会」
蔵王権現本地堂に於いて、蔵王権現の本地仏釈迦如来、千手観世音菩薩、弥勒菩薩の三尊を供養する法会。
拝観料等:境内無料 参拝無料
問合せ:0746-32-8371

◇8/7 7:30~9:30 東大寺「大仏さま お身拭い」   
東大寺大仏殿にて、年に一度の大仏さまのお身拭い。
お身拭い終了後は大仏殿の消防設備の放水訓練などが行われます。
問合せ:0742-22-5511
ブログ内過去記事はこちら

◇8/7 14:00~ 大神神社「七夕祭」
拝殿にて、学業の向上・技芸の上達と諸願成就を祈願する。
子供達が参加しやすいよう、月遅れで8/7に行われている。
問合せ:0744-42-6633

◇8/7 19:00~ 大和神社 戦艦大和みたま祭
問合せ:0743-66-0044

◇8/9 終日 東大寺二月堂「およく」 
この日に二月堂に参詣すると46000回功徳があるといわれています。
問合せ:0742-22-5511
ブログ内過去記事はこちら 2013年 2014年 2015年
2016年←平和の撞鐘についても書いています。

◇8/13~8/15 薬師寺「盂蘭盆会」
問合せ:0742-33-6001

◇8/13~8/15 「十津川の大踊り
小原の大踊りは8/13 19:30~23:30
武蔵の大踊りは8/14 19:30~24:00
西川の大踊りは8/15 20:00~24:00
問合せ:0746-62-0067(十津川村教育委員会)
国の無形民俗文化財に指定されています。

◇8/14 17:30~ 談山神社献燈祭
拝殿の吊灯篭と境内の石灯篭に献灯し、祖霊をおなぐさめする祭。
問合せ:0744-49-0001

◇8/14 8/15 19:00~21:30 春日大社「中元万燈籠」 
境内の3000に及ぶ燈籠は、800年の昔より貴族や武士を始め広く一般国民より奉納されたもの。廻廊沿いの釣灯籠の灯影には幻想の世界が現れ、参拝者で賑わいます。
問合せ:0742-22-7788

◇8/15 19:00~22:00 東大寺「万灯供養会」  
大仏殿の観相窓が開けられ大仏様のお顔が灯に照らされ浮かび上がる。
※2011年から灯籠・祈願のお申し込みをされていない方の入堂は有料(通常通り)になっています。
問合せ:0742-22-5511 
ブログ内過去記事は2013年  2014年 2015年 
2016年←大文字の送り火についても書いてます。2017年

◇8/15 20:00 点火 「高円山 大文字送り火」 
奈良の「大」の字は日本最大級の大きさ!
「一」の部分が109m、「ノ」の部分が164mです。
2009年6月に大文字の火床まで登ったブログ内記事はこちら
問合せ:0742-22-5200

◇8/15 「ほうらんや火祭
橿原市内 春日神社(12:30頃)と八幡神社(15:20頃)にて。
松明を持って境内を暴れ回り、疫病封じと五穀豊穣を願う
約300年続く伝統ある夏の火祭り。
問合せ:橿原市観光課(0744-22-4001)

◇8/15 10:30〜 法隆寺西室「夏安居結願法要・求道会」
夏安居最終日 結願法要と法話
問合せ: 0745-75-2555

真夏の奈良はたっぷり暑いのですが、お寺の伽藍の中はひんやりして
奈良公園の木々の葉陰を吹き抜ける風は涼やかです。
夏こそ奈良へ!どうぞお越し下さいませ。

2018年7月27日金曜日

暑中お見舞い申し上げます*

全国的に厳しい暑さが続く今年の夏。

奈良でも38度に届く日もあり、熱中症に気をつけて、身体を休ませることを第一に、無理をしない毎日を過ごしています。
今年は、あまりの暑さに、西ノ京ロータスロードも藤原京の蓮も見に行く元気が出なくて出かけられず。それでもこの季節には蓮の花も見たいとお休み明けの朝、まだ暑くなる前に、聖武天皇陵の蓮池まで。
ここは、奈良倶楽部から一番近い蓮の花の見えるところです。
蓮の花の涼しげな姿。清らかな美しさに、ほんの少し涼を感じました。
まだもう少し、次から次へと咲きそうです。(撮影7/26)

2018年7月26日木曜日

久しぶりの取材でした*

「朝食と朝さんぽがお目当ての宿」として、奈良倶楽部を取り上げていただけるということで・・・今朝は久しぶりの取材でした。
ライターさんとカメラマンさんは、日の出とともに奈良の朝の風景を撮影すべくお出かけに。朝食の時間に戻って来られて、開口一番「奈良の朝の空気の清々しいこと!こんなに気持ちがいいものだとは!」と。
とても感動されて「うんうんそうでしょう、そうでしょ!」と心の中で頷いてはにんまり。嬉しい言葉をいただいて、張り切って朝食の準備をいたしました。

朝食の撮影風景を逆取材させていただければよかったなぁと、後で思い出して、トップの写真を一枚、記念に撮らせていただきました。

雑誌の発売は9月中旬予定。東海エリアのみの販売になるようですが、手元に届きましたら、またブログでご紹介させてください。
奈良倶楽部が掲載されることも勿論うれしいのですが、「奈良の朝を歩く」というところを取り上げていただけたのが何より嬉しかったです。ありがとうございました。

2018年7月25日水曜日

8月のお出かけ情報①〜秘宝秘仏公開

夏場の秘宝秘仏特別公開の数はぐんと少なくなりますが
お盆の行事も含めて寺社の伝統行事や灯りのイベントなど、
夏の奈良旅行の思い出を彩る行事はたくさん開催されます。
どうぞ夏の奈良旅をご堪能くださいませ。
<<公開中の秘宝秘仏>>
◇〜8/19 喜光寺宇賀神特別開帳
問合せ:0742-45-4630 

◇〜8/31 おふさ観音「秘宝生き人形」
問合せ:0744-22-2212

◇〜8/31 9:00~17:00 安倍文殊院金閣浮御堂 夏の寺宝展
問合せ:0744-43-0002

◇~11/30 松尾寺「日本唯一の舎人親王像」公開
問合せ:0743-53-5023

<<今月から始まる特別公開>>
◇8/1~8/11 9:00~15:00 五劫院「五劫思惟阿弥陀仏」
◇8/1~8/15 極楽寺「広島大仏」特別開帳「三千仏軸」特別公開
問合せ:0743-57-2231

◇8/5~8/14 18:00~21:00 不空院 夜間特別拝観
「秘仏・宇迦辨財天女」「本尊・不空羂索観音菩薩坐像」特別開帳
問合せ:0742-26-2910

◇8/5 応現寺東鳴川観音講「木造不空羂索観音坐像」特別開帳

◇8/5・8/12・8/19・8/26 9:00~16:00
宝山寺獅子閣特別公開
問合せ: 0743-73-2006

◇8/7~8/8 9:00~15:00 室生寺慶雲殿「曝涼展」
一年に一度、立秋の日に室生寺では絵画を虫干しされます。
慶雲殿にて一般公開される絵画の中には胎蔵界・金剛界の両曼荼羅も。
問合せ:0745-93-2003

◇8/8 浄瑠璃寺「三重塔・薬師如来坐像特別公開」
※雨天、荒天時は中止
問合せ:0774-76-2390

◇8/13~8/15 薬師寺
玄奘三蔵院伽藍 大唐西域壁画公開
西塔初層内陣釈迦四相像特別公開」「食堂特別公開
問合せ:0742-33-6001

◇8/16 13:30~15:00  當麻寺中之坊導き観音ご開帳
問合せ:0745-48-2001

◇8/23・8/24 9:00~16:00 唐招提寺「地蔵堂」
弘法大師の作と伝わる秘仏、地蔵菩薩立像(重文)を特別公開。
問合せ:0742-33-7900

2018年7月24日火曜日

8/21「写真家が語る奈良の神饌〜供えるこころ〜」

東京日本橋にある「奈良まほろば館」での講座案内です。
「写真家が語る奈良の神饌〜供えるこころ〜」
日時:8月21日(火)18:30〜20:00 
講師:写真家・野本暉房氏 / 聞き手:倉橋みどり氏
会場:奈良まほろば館2階
資料代:500円
定員:70名(先着順)
申込方法:下記①または②のどちらかで要申込
①ハガキまたはFAX:講演名・講演日時・住所・氏名(ふりがな)・電話番号・年齢を明記し、奈良まほろば館へ送付。
103-0022東京都中央区日本橋室町1-6-2 奈良まほろば館2F
TEL:03-3516-3931/ FAX:03-3516-3932 
②ホームページ:「申込フォーム」から申込み。
奈良県内の祭りは個性豊かです。その一端がお供えもの~神饌の豊かさにあらわれています。長年、県内の祭りをこまめに取材、撮影してきた写真家 野本暉房氏が今春、出版した『神饌 供えるこころ 奈良大和路の祭りと人』(淡交社)も好評を博しています。神饌を通し、奈良県内の祭りの「豊かさ」「奥深さ」を知ることで、奈良への関心も一歩進んだものにしてみませんか。
講師は野本暉房氏、聞き手は奈良の編集者で同書の編集・執筆を担当した倉橋みどり氏。豊富な写真作品をスライドで紹介しながら、ぜひ実際に足を運んでみてほしい奈良県内の祭りについて、歴史、スケジュール、参列するには・・・などの情報もふんだんにお伝えします。
まほろば館サイトより)
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野本さんの写真集についてのブログ内過去記事はこちら
関東圏の皆さま、どうぞよろしくお願いいたします。

2018年7月23日月曜日

東大寺本坊での催し*ご案内

◆7/27~8/7 9:30~17:30 入場料200円
「東京藝術大学が育む文化財保護の若き担い手達」展


サイトに記載されていた《模刻・模造について》が興味深いです。
以下、コピペですが・・・
明治23年、岡倉天心らによって古像の模造事業が開始されました。
これは古美術研究・美術教育を目的としたもので、のちに新納忠之介を中心とした文化財としての仏像修復へとつながっていきました。
現在東京藝術大学で行われている模刻・模造研究も、この流れを汲むものと言えます。
模刻・模造の歴史は古く、ヨーロッパでは、ギリシャ彫刻を模したローマン・コピーが有名です。
日本でも、古くは平安時代の仏師が奈良時代の古像を模造したとの文献が残っているほか、現代においても文化庁と公益財団法人美術院国宝修理所によって、国宝の模造事業が継続的に行われています。

では模刻・模造とは、どのようなことを指すのでしょうか。
一般には、「本物によく似せてつくること」を指します。
しかし本展に出品されている作品の多くは、研究を目的に造られたもので、imitation(複製品、偽物)ではなく、reproduction(再生、再現)と英訳されます。
つまり、オリジナルの構造や技法、素材までを可能な限り再現し、当時の技を体得することに大きな目的を持つ、いわば再現制作です。
美術院国宝修理所による模造事業がその最たる例です。
しかし造形面で本物に迫るものでなければ、それは模刻・模造と呼ぶには十分なものとなりません。
また現在では文化財へかかる負担を考慮すると、常に本物を横に並べて制作することはできません。
そこで当研究室では、2004 年より非接触・非破壊の彫刻文化財の三次元計測調査に取り組んでいます。この調査で得られた精密な3D データから、再びアナログな紙媒体の「図面」におこして木材などに描き、手作業で制作します。
また実物を間近で観察するように、高精細な写真や、3D データをモニター上で観察して量感を把握し、実際に自らの手で彫り刻んで当時の技を体得していきます。
もちろん所有者の方からお許し頂いた際には、特別に拝観させて頂く場合もあり、それに越したことはありません。
時には、透過X 線撮影も行い、その内部構造の再現も試みます。
※8/4(土)13:00~16:00  春日大社「感謝共生の館」にて
東京藝術大学研究室スタッフによる講演会もあります。
聴講無料/申し込み不要です。
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また、8/28~9/2には
「東京藝術大学学生による東大寺本坊企画展」が開催されます。
会期中無休 / 入場無料 / 10:00~17:00(入場は16:30まで)

2018年7月22日日曜日

奈良博「糸のみほとけ」展へ*

「糸のみほとけ―国宝 綴織當麻曼荼羅と繡仏―」
當麻寺「国宝 綴織當麻曼荼羅」の修理完成を記念し、綴織と刺繡による仏の像を一堂に集めた特別展です。
出展点数は国宝9件、重要文化財35件を含む138件とすごいボリュームで、刺繍が至近距離で見られるように、展示ケースのガラス面ぎりぎりに作品を置くという工夫が全てにされています。
ガラス越しですが、刺繍糸の一本一本、また刺繍を施した下地の布地の織り柄まですごくクリアに鑑賞できるのです。
飛鳥時代の刺繍「天寿国繡帳」は今までに何度か観ているのですが、今回はその展示の仕方が素晴らしくて、またこんな見方は二度とできないかもしれないと思いました。
それぞれの展示物に、詳しく丁寧なキャプションがついているのも、いつもの奈良博ならでは。毎回、奈良博の展示物に対する愛を感じて、その展覧会を鑑賞するのが楽しいのでした。
今回の展覧会では、いつもの出口が入口になり↓、入口のところが出口になる↑という構成で、中の展示室の使い方もいつもと違って、それがまたとても新鮮でした。
さて、いつもの鑑賞記ですが、取敢えずは強く印象に残ったところをピックアップしてみます。
展示物の量が多すぎて、実はあまり消化できていないのです。
(普通に鑑賞していて3時間はかかると思って下さい。)

会場の構成は・・・①西新館の北側展示室では
「天寿国繡帳」「綴織當麻曼荼羅」「刺繡釈迦如来説法図」の国宝3点が一堂に会して、それはそれは見事。圧巻でした。
聖徳太子が往生した世界を刺繡で表した「天寿国繡帳」↑は、鎌倉時代に模本が作成されました。江戸時代に、新旧の繡帳は断片化しており、飛鳥時代のものと鎌倉時代のものの断片を貼り交ぜた状態で一幅の掛物としたのが、この現在のもの。  
この中で、刺繡糸の美しい残欠の方が飛鳥時代のもので、茶色に退色した刺繡片の方が鎌倉時代のものというのも面白く、1400年も前の刺繍糸の色鮮やかさにも感動します。
併せて「天寿国繡帳」の刺繍断片もたくさん展示されていましたが、刺繍を施していない布地が摩耗して刺繍片が残るということで、この展覧会の趣旨である「一針一針に込めた祈りの刺繍」から話は飛びますが、布に刺繍を施すことによって布地を強くするという、アジアやアフリカに残る刺繍に通じる目的を感じました。
「綴織當麻曼荼羅」↑は奈良時代に中将姫様の祈りによって、蓮糸を使い一晩で織り上げたと伝えられる約4m四方の曼荼羅。
初めて目にした「綴織當麻曼荼羅」原本。
まさか一晩で織り上げられたとは思いませんが(部分復元模造を川島織物が製作されて、そこから計算しても8年はかかるだろうとのこと)、中将姫様の強い祈りが1200年以上の時を経て今に伝わっていることを思うと何ともいえない感動を覚えました。
「刺繡釈迦如来説法図」↑は、古代の繍仏で最も大きく完成度の高い作品。刺繍の技法は、馴染みのある鎖繍がメインと知って、よくよく眺めてにんまりしたり。
法隆寺金堂壁画六号壁に描かれている菩薩と近似の菩薩もあり、制作年代が飛鳥時代後期に遡る可能性もあるのだとか。
それにしても、古代の刺繍技術の素晴らしさ!そして、我が国最初の仏が刺繍であったことや、繍仏が古代には盛んにつくられていたことなども、この展覧会で初めて知ったことでした。
大英博物館からは、敦煌で発見された繡仏「刺繡霊鷲山釈迦如来説法図」↑が!日本初公開だそうですが、お隣に展示の「刺繡釈迦如来説法図」と見比べて鑑賞する贅沢も堪能できました。 

会場の構成②西新館の南側展示室は
平安時代から鎌倉時代の繍仏と、中国の繍仏が一堂に。
歴史的に見て、平安時代は綴織の仏(織成像)や繍仏が急激に少なくなり、仏画の製作が盛んになった時期。
鎌倉時代になると、また繍仏の作品数が飛躍的に増え、作品は小型化するが工芸的な美を極めた繍仏が登場し、再び繍仏の黄金期を迎えます。
また、中国の繍仏のコーナーでは、知恩院蔵の「刺繡九条袈裟貼屛風」↑の意匠が見事でした。

会場の構成③東新館の展示室に入った途端に目に飛び込むのは
京都・真正極楽寺の「刺繡當麻曼荼羅」↑
江戸時代に、綴織當麻曼荼羅と同寸で表された大幅の繡仏。
金糸をふんだんに用い、眼と白毫には水晶を嵌めて、江戸時代の様々な刺繍技法が施された當麻曼荼羅。展示の仕方も素晴らしくて、離れがたいものがありました。
真正極楽寺(真如堂)では、普段非公開のものですから、もう一度ゆっくり拝見てみたいと思います。

東新館では、美しい中将姫坐像がお迎えくださいます。
そして、髪の毛を繍い込んだ「阿弥陀来迎図」や「阿弥陀三尊の種子(梵字)」の数々。
「阿弥陀来迎図」では、如来の螺髪と菩薩の髪、衣の一部を髪の毛で刺繍しているものがほとんどで、おそらく、この髪の持ち主の極楽往生を願って、仏の一部に髪を繍い込んだのではと考えられています。
たくさんの髪繍が一堂に集まった会場。黒々とした髪の毛が今も色褪せずに発色している様子に、追善供養や祈りの気持ちを理解しながらも、個人的にはちょっと苦手と、最後のコーナー、近世・江戸時代の繍仏のところに来て、ほっとしたこともカミングアウトしておきます。
こうして飛鳥時代から江戸時代までの繍仏を見ていくと、各時代ごとの刺繍技術の変遷もよくわかってたいへん面白かったです。特に江戸時代になると、もう現代そのものという感じなのですね。
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とにかく出展物のボリュームがすごくて、予定していた時間では足らず、後半は駆け足で鑑賞してしまいましたので、8/7以降の後期展示にもまた行かなくてはと思っています。

「糸のみほとけ―国宝 綴織當麻曼荼羅と繡仏―」
会期:7月14日(土)~8月26日(日)
会場:奈良国立博物館 東新館・西新館
休館日:毎週月曜日(ただし7/16・8/13は開館)
開館時間:9時30分~18時
※毎週金・土曜日と8/5~8/15は19時まで
※入館は閉館の30分前まで
その他に:
※7/24(火)10時より、会場の「綴織當麻曼荼羅」の前で
當麻寺中之坊の僧侶により蓮華会を勤行します。
(蓮華会は旧暦6月22日の夜から23日の朝にかけて中将姫が當麻曼荼羅を織ったのにちなみ、7月23日に當麻寺本堂の當麻曼荼羅の前で行われます)
※7/28(土)7/29(日)は小中学生無料デーです。
※公開講座や関連イベントもこちらからご覧ください