志賀直哉旧居で開催中の「諸紙布もろじふ」展へ行ってきました。
「諸紙布もろじふ」とは聞き慣れない言葉ですが、これは経糸たていと、緯糸よこいと共に紙糸を用いた紙布のこと。
で「紙布しふ」とは、その名の通り和紙を糸にして織られた布のことなのですが、通常は経糸には絹や綿、麻などを用い、緯糸に和紙の紙糸を織り込んだ布を指します。
紙で出来た布と言えば、修二会の練行衆が着る紙衣かみこをつい思い描いてしまうのですが、経糸緯糸共に紙糸を用いた「諸紙布」は、紙をそのまま衣類に用いた紙衣からは想像も出来ないくらい繊細で美しく、極上の芸術だと思いました。
この「諸紙布」をつくってらっしゃるのが軽野裕子さんという方。
(色々検索してみると布茶さんのブログにいきついてしまいました)
会場で軽野さんに、紙から糸を作る工程を説明していただきました。
まず和紙を4等分に折り、2mm間隔に切り↑、コンクリートブロックの上などで柔らかく揉みこみ、こよりのように細くします。(写真↓の左)
和紙の端を互い違いにちぎっていくと、一本の糸になり(写真の籠の中)
この糸に縒りをかけたものが下の写真↓の上にある生成りの糸。
植物染料で染めた糸とその糸で織られた布も↓
(参考までに・・・紙から糸にしていく工程は、検索していて見つけた「京都造形芸術大学 通信教育部染色ブログ★」にわかりやすく載っていました。)
こうし織りあがった一反の布が、障子越しの柔らかな光を孕んで、優しい風合いの中にも凛とした静謐さを漂わせ、見る者を魅了してやまないのでした。・・・本当に、ため息がでる美しさでした。
新潟県の門出和紙(和紙のことを軽野さんは生紙きがみと呼ばれていますが)や、京都府の黒谷和紙など日本の手漉き和紙の強靭さについても、ここで説明してくださいました。
また紙布が生まれた背景には防寒着としての役割があったことなども。
志賀直哉邸のお庭の瑞々しい緑も、「諸紙布」の透明感ある美しさを際立たせているようでした。
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「軽野裕子 諸紙布展」は5/30(月)まで。10:00~16:30です。