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2012年12月18日火曜日

春日若宮おん祭2012*「松の下式」と「お渡り式」

お旅所の御假殿にいらっしゃる若宮様のもとへ、芸能集団や祭礼に加わる人々が社参する「お渡り式」は、意匠を凝らした華やかな風流の行列として、おん祭の大きな魅力の一つとなっています。
一の鳥居を入ってすぐ南側壇上にある「影向の松ようごうのまつ」↑
能舞台の鏡板に描かれている松といわれ、この松の前で春日大明神が翁の姿で万歳楽を舞われたという由緒のあるところです。
今年はこの松のすぐそばで「松の下式」を拝見する機会を得ました。 

「松の下式」とは、お渡り式の一行の中でも、陪従べいじゅう・細男せいのお・猿楽さるがく・田楽でんがくの芸能集団が「影向の松」の前で、各々芸能の一節や、所定の舞を演じることで、この所作をしてからでないとお旅所に入れないのだそうです。
影向の松の前に座っている稚児二人は「頭屋稚児とうやのちご」で↑
松の下の行事を検知する重要な役目を持っています。

おん祭の中心行事ともいわれる華やかな「お渡り式」ですが、実はまだ全部を一堂に見たことがなく 今回は行列を始めから終わりまで拝見できることも楽しみでした。

先行行列の榊車と御所車がまず進んで行きます。↑
女官たちがその後に続いて



千早と呼ぶ長い白布を肩に掛け地面に曳いて進む赤依せきえの二人。
日使ひのつかいを先導します。
十列児とおつらのちご↑と
日使ひのつかい(右端の黒の束帯姿の方)」とお供の「陪従べいじゅう」↓
冠には山吹の花が挿してあって風流ですね。
「松の下式」では陪従が馬上で短かい曲を奏します。↓

「奈良神子」も通り、その後には「細男座」
浄衣姿の細男一座。「松の下式」では馬上で袖の拝をします。

山鳥の尾を頂に立てたひで笠をかぶり、背中に牡丹の造り花を負った「馬長児ばちょうのちご↑と、その後には、五色の短冊をつけた笹竹を持ち、龍の造り物を頭にいただき、腰に木履を一足吊り下げた従者が二人ずつ従います。↓

「競馬」↑↓赤と緑の錦地の裲襠装束りょうとうしょうぞくに身を固め、細纓冠をつけた騎者が三組6人で渡ってこられました。
この時で13:15くらいでしたが、この後、赤緑2頭ずつ三組が出走し
この競馬の左右の馬の勝負によって、舞楽の蘭陵王(左舞)と納曽利(右舞)の順番が決められます。

いよいよ「猿楽座」が入ってこられます。↓
「猿楽」とは能楽の古名で、おん祭には今は金春座が出仕していますが
もとは観世・金剛・宝生を含めた大和猿楽四座が出仕し
おん祭はその格式高い競演の場であったのでした。
「松の下式」では『開ロ』『弓矢立合』『三笠風流』が演じられます。
『開口』を演じる高安勝久氏。

『弓矢立会』を演じる金春安明,高橋忍,金春憲和各氏。

『三笠風流』を演じる茂山正邦氏

これまで演じられた「松の下式」の『陪従の笛』も『細男座の馬上での袖の拝』もすごく短い時間の所作でしたが、「猿楽座」の能楽は、たっぷりと20分ほど演じられてとても見応えのあるものでした。
その後、お旅所入口では金春大夫による「埒らち明け」が行なわれるのですが、影向の松のところにいると、こちらの拝見は諦めなければなりません。
 
「猿楽座」 の後に続くのは「田楽座」

奈良一刀彫りの起源といわれる人形を飾った大きな花笠は
ちょっと目を引くユニークなもの↓

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「松の下式」は以上で、その後に続く行列は参道にて見学をしました。


りっぱな馬がつづきます。「将馬いさせうま
「野太刀」を担ぐのは自衛隊の方々だそう。
「大和士やまとざむらい
「松の下式」で検知をしていた「頭屋稚児」もお役目が終わって影向の松から退座しお旅所に向かいます。神の宿る存在として地面に足をつけぬよう「肩車」でのお渡りです。
子供大名行列↑可愛くて微笑ましいです。
奈良市の小学校はおん祭の日は2時間目までなので、子供大名行列の頃、参道ではお友達たちの声援が元気よく聞こえていました。

お渡り式の行列最後は、南都奉行の大名行列です。
その後、暫く待って参道では「稚児流鏑馬ちごやぶさめが行なわれます。

稚児流鏑馬が行なわれたのは14:40過ぎ頃からでした。
この頃にはお旅所で「お旅所祭」も始まっていたのですが
稚児流鏑馬が終わって雨模様になってきましたので
今年はこれで「おん祭」の見学を終了しました。

今回は「松の下式」を中心に見学しましたが、同時に並行して行なわれる「南大門交名の儀」や「埒明け」「競馬」などは拝見できませんでしたので、こちらはまた来年以降のお楽しみに、何年か時間をかけて
「おん祭」の諸行事を拝見していければと願っています。

またお渡りされた一行がお旅所に着いて、若宮様に拝礼して 所定の位置につかれるところも、それぞれの集団によって拝礼の仕方に特徴があるということで、こちらもいつかじっくりと拝見したいと思っています。

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今年の「奈良神子」をつとめられたメイちゃん家のたーさんのブログに当日の様子が詳しく紹介されています。です。