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2016年4月11日月曜日

奈良博「国宝信責山縁起絵巻−朝護孫子寺と毘沙門天王信仰の至宝」展

今回の特別展では、日本三大絵巻の一つ「信貴山縁起絵巻」全三巻が、全会期中を通じて全巻すべての場面を同時公開するという史上初めての試みが行なわれました。
これは本当にすごいことですよね。
実際に鑑賞してこんなに素晴らしい展示空間は初めてでした。
東新館一室を使って、平安絵画の名品、躍動感溢れる「信貴山縁起絵巻」の「山崎長者巻」「延喜加持巻」「尼公巻」全三巻が全部開いて展示されていて、大変見やすくストレスなく鑑賞でき、いいものを見たあとの楽しい気分に満たされた展覧会でした。
「奈良博、やるなぁ!」と嬉しくなっているのですが、こういう試みが、他の展覧会での先駆けになってくれれば尚嬉しいことです。
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さて、前置きが長くなりましたが・・・
絵巻の内容そのものは申し分なく素晴らしく、その感想は人それぞれにあると思いますが、ここでは簡単に私がツボにハマった部分のみ記しておきます。(ストーリーの紹介なども省略します。)
「山崎長者巻」では、絵巻の最後に描かれた、油絞り器や荏胡麻を炒る竃など細かい描写に惹かれてしまいました。
全巻通じて感じたのは、建物がかっちりと描かれていて、その線描の確かな構成力が絵巻のアクセントになっているように思いました。そして信貴山への山中に描かれている鹿の姿にも好ましいものを感じました。
「尼公巻」に描かれた大仏殿は南都焼き討ち前の大仏殿の姿。
東大寺と信貴山との繋がりとして解説に、若草山から信貴山を遥拝していたという南都の山岳修行者たちのことが書かれていました。
また、深い山並の間に描かれた長者の飛倉の材で、その後毘沙門天が作られてというエピソードや、尼公が弟命蓮のために作った防寒着の布地でお守り袋が作られたいうエピソードにも惹かれました。
年老いた姉と弟の再会ストーリーには心が熱くなって、かなり感情移入して見てしまい、また全巻を通して、命蓮上人の人間味に触れることができ「信貴山朝護孫子寺」がより身近なお寺として感じられるようになりました。
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その他に西新館では、粉河寺の本尊千手観音の霊験を描いた「粉河寺縁起巻」(国宝)や「地獄草紙」(国宝 5/2まで)など、同時代の絵巻も出陳され、これも見応えのあるものでした。
西新館では他に、朝護孫子寺の寺宝や、毘沙門天信仰、創建・聖徳太子に関連したものや、また中世に武家の尊崇を得たところからの関連のものが多く出陳されています。そのどれもが素晴らしいのですが・・・
「きたまち」在住のものとして目に留まったのが、多門山城主であった松永久秀の書状(↑下段のもの)や、般若寺と関係の深い大塔宮護良親王おおとうのみやもりながしんのうの喉輪↓でした。
歴史上の人物の書状や身につけていたものからは、その時代を生きていた証しや人となりも感じ取ることができ興味深かったです。
個人的な感想を綴りましたが、超オススメの展覧会です。
是非ご覧になってくださいませ。

「国宝信責山縁起絵巻−朝護孫子寺と毘沙門天王信仰の至宝」展
会場:奈良国立博物館
会期:4/9〜5/22
開館時間:9:30~17:00(4/29以降の金曜日は19:00まで)
休館日:毎週月曜日(但し5/2は開館)
公開講座:こちらを参照して下さい→
その他に朝護孫子寺による講話や関連イベントもあります。
また、4/29より「なら仏像館」がリニューアルオープンします!
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 公開中の庭園では紅枝垂れ桜が満開!
これから見頃の八重桜↓(品種がわからず)や
まだまだ蕾のナラノヤエザクラ↓や
ハナミズキ↓などこれから楽しめるお花もあり
展覧会と合わせて庭園散歩もどうぞお楽しみください。