奈良県立美術館で開催中の「不染 鉄」展。
もう一ヶ月も前に観て、素晴らしい感動を受けたのです。
それをブログでうまく伝えたいなと思っているうちに、会期も残り3週間となり、早く鑑賞記を書かなくてはと焦っています。
取り急ぎは、とてもとてもよかった展覧会なので
「よく知らない画家だし」と観に行くのを迷ってらっしゃったら、とにかく是非行ってみて下さい。個人的には、超オススメ展覧会でした。
(私も「よく知らない画家さん、どんな絵を描く人なのかなぁ」と、軽い気持ちで観に行った一人です。)
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以下、個人的な鑑賞記です。
いつものように長文で、取り上げた作品も好きなものだけと言う偏った鑑賞記。もし興味を持っていただければ「続きを読む」からどうぞ。
さて「不染 鉄」といえば、この「山海図絵」という富士山の絵。
太平洋に群れ泳ぐ魚から雄大な富士山を越えて雪降る日本海の漁村までを、細密画のように描き表した独創的な作風の作品は、不染の代表作の一つとなり、今展覧会でもパンフレットやポスターなどにこの作品が使われています。
実は、晩年の代表作品かと思っていたのですが、大正14年、34歳の作だったのにはびっくり。
そして、展覧会場で実際にみるとやはり素晴らしい!
図録から撮影した写真で見にくいのですが、大正末期から昭和初期にかけて何枚もの富士山作品があり、俯瞰図とはまた違った、神々しいばかりの富士山↑や、淡く優しい色調の富士山↓もあり。
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富士山のような代表作品しか知らずに会場入りしたのですが、大正末期から昭和の始めにかけての作品が第一章にあり、そこには、見ていて郷愁を誘うような、懐かしくも温かな情感の絵が多くあり、とてもいいなぁと思ったのです。
大正12年「冬」卒業制作作品
静謐でありながら温かな感じがするのです。この絵を見て画家の人柄に興味を持ちました。
昭和2年「都跡村之図」
唐招提寺の金堂を正面に据え、手前には都跡村の家並み。構図の妙に感じ入りました。
大正末期〜昭和初期頃「静かな水辺の村」
余分な線がなく静寂そのもの、でも格調高いです。
昭和初期「秋色山村」県美の館蔵品でもあるこの作品。
いつかまた鑑賞の機会に恵まれますように。
こちらも「懐かしくて温かな情感」を感じさせる作品でした。
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昭和10年代の作品には水墨画・山水画が多く(戦時下に、紙や墨は比較的調達しやすい画材だったということもあるそうですが)
信州の雪景色や伊豆の海、富士、そして奈良・西ノ京の風景を描いた水墨画は、力の抜け具合がまた飄々とした味わいで
水墨画は苦手でスルーしがちの私でも、一つずつ丁寧に鑑賞したほど、何が描いてあるのだろうと細部まで見ていったのでした。
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戦中の水墨画表現が、戦後に描かれた「海」や「薬師寺の東塔」へ結実していっているとありました。確かに、この波の表現を見るとすごいなぁと思うのです。
昭和30年代に描かれた「南海之図」
波の表現が素晴らしかったです。
そして、昭和50年頃の最晩年の作品「海」
海の中に家があり魚の表情もどことなくユーモアがあり、不思議な魅力のある作品でした。
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奈良・西ノ京。唐招提寺から始まって、やがて薬師寺東塔を描いて描いて、表現がどんどん変遷していっている様子も見ていて楽しかったです。
昭和中期頃(20~40年)の「奈良風景」
唐招提寺が手前で薬師寺東塔がその向こうに描かれています。
ずっと先には、興福寺五重塔や大仏殿と若草山が見えます。
昭和40年代の「奈良風景」
薬師寺東塔が手前で唐招提寺がその向こう。
ずっと先には興福寺五重塔と大仏殿。デフォルメされた若草山。
昭和40年代の「薬師寺東塔之図」
ずっと向こうに興福寺五重塔と大仏殿、デフォルメされた若草山が描かれている構図は同じ。
昭和40年頃「薬師寺東塔」
終の住処となった西ノ京を代表する薬師寺の中でも特別な存在である東塔。たくさんの東塔の中で、シンプルで気品に満ちた作品だと思いました。
昭和45年頃「薬師寺東塔の図」
昭和中期頃「奈良秋景」
唐招提寺を中心に描かれた作品に、個人的には惹かれます。
昭和40年頃「大仏殿」
南大門前の参道の賑わいも不染にかかると、こんな風な静かな佇まいになるのですね。
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昭和49年頃「落葉浄土」
昭和51年、84歳で亡くなる直前まで絵筆を取り続けていたという不染。
最晩年に描かれた作品まで180点もの作品が展示され、「不染鉄」という画家の痕跡を知ることのできる貴重な展覧会でした。
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特別展「没後40年 幻の画家 不染鉄展」
会場:奈良県立美術館
会期:9/9〜11/5
開館時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)
休館日:10/17以降の休館日はありません。
※奈良県立美術館の前に開催されていた「東京ステーションギャラリー」の展覧会ページに、作品や画家についてわかりやすくまとめられています。ご参考にどうぞ→★