入江泰吉旧居でのシリーズ講座「伝統行事と入江泰吉」の一環として「唐招提寺 観月讃佛会」についてのお話会がありました。
講師は唐招提寺の石田太一副執事長。
今年の中秋の名月は10月に入ってから。10/4のその日を3日後に控え、唐招提寺のお月見「観月讃佛会」を中心にお話が進みます。
奈良でお月見といえば唐招提寺というくらい、唐招提寺の「観月讃佛会」は広く知られているのですが、その始まりは意外に新しく昭和30年。まだ62年しか経っていなくて「伝統行事とは言えないのですよ」と、まず冒頭にお話しされました。
当時の第81世森本孝順長老の発案で、人間だけでなく仏さまや鑑真さまにもお月見をしてもらおうと創められたのだそうです。
上の写真は、入江先生が撮影された、その頃の観月讃佛会。(写真集より)
金堂の扉の上半分に固定されている格子戸を外して、仏さまからも眺められるように、また金堂の前には行灯も置いてという設らいをされたのです。
この当時、金堂内には40Wの蛍光灯が3本設置されていたきりなのですが、その照明だけで、このような荘厳な雰囲気が醸し出されて、入江先生の写真はやはりすごいですよね。
余談ですが、当時の新聞には、電気を付けて仏像を見世物にしてと辛口意見が書かれたそうです。また、この置き行灯のアイデアは、今ではあちこちのお寺でも取り入れられていますが、初めてされたのは唐招提寺ではとおっしゃってました。(お寺でのお月見行事も唐招提寺が初めてかも?)
お献茶法要もこの時から行なわれ、これは法華寺さんがされていたのを取り入れられたということです。
荒廃していた唐招提寺を戦後に復興された森本孝順きょうじゅん長老の座右の銘は「創意工夫是道」。
「粋」で、空間構成に長けた方だったそうで、今イメージされる唐招提寺の境内は森本長老が作られたもの・・・例えば、御廟の参道をまっすぐにし、草ぼうぼうだったところに苔を植えてなど。とにかく美意識センサーがすごく、それに共鳴した人とは長いおつきあいがある。入江先生とは、最初の頃「飛鳥園に行ってもっと勉強してこい」と仏さまの撮影について怒られたこともあったそうですが、その後の長いおつきあいを見るに、森本長老の目指すところの高みまで、入江先生も励まれてこられたのではということです。
さて、今年のお月見も御影堂平成大修理のため、金堂にてご本尊とお月様にお献茶、鑑真和上さまのお月見はなく、御身代わり像の鑑真さまがお月見をされます。
また、御影堂大修理のために東山魁夷画伯の襖絵は2021年まで非公開。ただ、期間中に出張されることもあり。
2018年は、8月末〜9月中旬に京都国立近代美術館。
10/24〜12/3に東京国立新美術館での展示が予定されています。
石田太一副執事長のお話は軽妙でわかりやすく、とても集中して聞くことができました。
この後も、「山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁」という、長屋王が中国の僧に施した千枚の袈裟の縁に刺繍されていたものについてのお話や、8世紀の金堂建築についてなども伺いました。
配布されたレジュメの全てまではお話しきれなかったくらい、中身の濃いお話でした。次回に是非またこの講座の続きを期待したいところです。
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「唐招提寺 観月讃佛会」10/4 18:00~21:00(18:00より拝観無料)
金堂内ご三尊像の撮影は禁止されていますので宜しくお願いします。