ページ

2017年5月19日金曜日

県美「榊莫山と紫舟のシンフォニー」

奈良県立美術館で開催中の書の源流企画展「榊莫山と紫舟のシンフォニー(交響)」に行ってきました。
榊莫山さんは、生前よくテレビのコマーシャルなどでお見かけしていた方。飄々とした字を書かれるというイメージを持っていましたが、実は莫山作品をこんなにまとまって拝見したのは初めてです。
どんな作品があるのだろう・・・と、少し楽しみに観に行きました。
展覧会は、想像以上のボリュームと内容で、かなり満足。
何よりもびっくりしたのは、莫山先生が10代の時に書かれた漢字です。
端正で完璧に美しい書体に驚くとともに、このようなしっかりとした基礎があってこその、あの味わいのある字体なんだなぁと、妙に納得したのでした。
::
初めに代表作品2点が展示されていました。
どちらも惹かれた作品なので図録から文章も引用しておきます。
 「寒山拾得」
寒山「山へイコカ 川へイコカ」拾得「イヤジャ 空へイコヨ」
世俗を超越した寒山と拾得の姿に惹かれるものがあったと、書いてありましたが、晩年の莫山先生のイメージそのもののようにも思いました。
「土」 
榊莫山は漢詩を主題とする時期の後、現代詩を主題に書を制作していましたが、他の詩人の詩的イメージを視覚化することに限界を感じるようになり、自身の言葉を書くようになりました。
「耕土(土ヲ耕ス)」「臥藁(藁ニ臥ス)」などを書く段階を経て、丸い石に漢字1字を刻むようになり、やがて石の彫刻の陰影を墨で紙に表現する仕事に取り組み、「土」「行」「女」など漢字1字の書作品を生み出しました。また、開放的で明るい陰影を求め、淡墨を用いました。
とりわけ「土」は重要な文字でした。

太古に「土」という文字が生まれた時、2本並んだ横棒には果てしなく広がる地表と地中、それを貫く1本の縦棒には、地中に埋もれた一粒の種子が地表を破って発芽する姿というイメージが込められていたことを知り、そのイメージを表現しようとこの主題を繰り 返し取り上げました。(図録より抜粋)
「土」への想いを知りえたこと、これも収穫でした。
::
その他にいいなぁと思った作品は
「東大寺ノ松林」や「室生寺ノ塔」などの大和八景作品↑。
特別出品の、東大寺のために書写した写経手本↓も素晴らしいです。
::
そして、 奈良で書家としての第一歩を踏み出し、奈良の伝統工芸から学んだ美意識を基に世界で活躍する紫舟さんの作品達もまた見応えがありました。
美術館の県庁側壁面には、紫舟さんの「鯨波動図」↑。
作品をシートにして掲出されていて、県庁のロビーから眺めると、額縁に納められた絵画のように見えるのだそうですよ。
奈良にゆかりが深い書家二人のコラボ作品展。
会期が7/23までと長く、途中6/6から一部展示替えもあるようなので、また観に行こうと思っています。
::
書の源流企画展「榊莫山と紫舟のシンフォニー(交響)」
開催期間: 4月15日(土)~7月23日(日)  9:00~17:00
開催場所 :奈良県立美術館 ( 0742-23-3968)
料金: 一般 400円
休館日:月曜日(但し、7/17開館・7/18休館)
尚、「ムジークフェストなら2017」(6/10-6/25)期間中の月曜日(6/12・6/19)は開館されます。