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2018年4月1日日曜日

野本暉房さん*写真集出版と写真展開催

「神饌 供えるこころ 奈良大和路の祭りと人」
写真家・野本暉房さんが写真集「神饌 供えるこころ 奈良大和路の祭りと人」を出版されました。
また、出版を記念しての写真展が4/4から4/8まで、奈良県文化会館で開催されます。期間中は毎日11:00からと15:00からの2回のギャラリートークも行われます。
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長きに渡って、大和の祭りや神事など年中行事を追いかけてこられた野本さんならではの、一つの視点「神饌」にフォーカスした写真集は、見る者を未知なる世界へと誘ってくれます。
そしてその写真から、ただただ神さまに喜んでいただきたいという感謝の気持ちを汲み取っては、見る者も厳かで敬虔な気持ちにさせていただけるのでした。
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写真集の内容を少しご紹介してみましょう・・・
写真集の帯より
古代の気配を漂わす奈良県各地の祭事でご神前に献じられるさまざまな「神饌」。そこにはあたたかで素朴な日本人の信仰のすがたが宿る―奈良の年中行事を追いつづける写真家の眼と、奈良を愛してやまない編集者の案内による、彩りも豊かな「神饌」の世界へのいざない―
目次
第1章 神饌の色色
第2章 神饌のかたちの不思議
第3章 いのちを供える
第4章 舞を供える、音を添える
第5章 火を供える、水を供える
第6章 神饌ができるまで
第7章 直会のよろこび
鹿谷勳さんの序文より(一部抜粋)
『今回の企画は、奈良県内を縦横に巡り、無数の場面から息をのむような一瞬の民俗を精力的に切り取り続けてきた野本暉房氏と同氏の写真を扱ってきた編集者でライターの倉橋みどり氏による成果である。
枡 型などに入れて成形したお供えの飯をキョウと呼ぶが、それはまさに神への「饗応」である。一年の平穏無事、年穀の豊穣、家族の安泰のために、土地の神々に 対して心からの「饗応」を長い年月続けてきた大和の人々とお供え物が、色や形、舞・音・命・、火・水さらに調製と直会のよろこびという独自の構成で、いき いきと捉えられており、大変興味深い。急激に変転する現代社会において、大和の神饌と人を巡る美しく新しい成果を紐解きながら、積み重ねられた民俗の意味 を、改めて考えてみる必要があるだろう。』
野本暉房さんのあとがきより(一部抜粋)
『今回は奈良大和の神社祭礼から特殊神饌と呼ばれるものを中心に取り上げております。
奈良大和の祭事、神饌などはどちらかというと、静かでおとなしめの感があります。でも丁重さはほかよりも感じられるものがたくさんあります。
また本来の食べ物を中心とした神饌だけでなく、おもてなしの演出とも言える、舞、唄、火、水なども含め取り上げました。
神様には元来私欲のお願いごとをするというものではなく、荒ぶる神を鎮める、国土、民の安寧を祈るというものだと言われています。
「今年もおかげさまで野山の幸も海川の幸も得ることができました」と神様にその報告と感謝をし、捧げるのが神饌だと思われます。 

我々民はハレの日でもある祭礼の日に特殊神饌など目を引く神饌に興味を感じますが、多くの神社では毎朝に「日供」という神饌を上げておられます。神饌の基本とも言えるもので見落としてはなりません。それらは、水、米、塩、酒、餅など、多くが素朴な状態のものです。
こうした祭事や神饌などは、日本人の精神文化の形成に影響を与えてきた大きな要因であったのではないでしょうか。
近代化激しい時代で祭事も簡素化省略化される傾向がないでもありませんが、こうした文化の伝承は続いて欲しいと願うものです。』
最後のページには「奈良大和の祭り(神社行事)要覧」として、日にち順に行事が紹介されていて、これは重宝させていただきます。
・・・最後のページと書きましたが、「行事一覧」は、何と12ページにも渡って紹介されているのです。特に秋の収穫感謝の祭りが行なわれる10月の行事の多さは圧巻です。
古代から伝わる神様への感謝を今もかかさず続けておられる奈良大和の人達の心意気を、写真集から感じ取っては誇りに思うのでした。