久しぶりの快晴!青空の下、自転車をとばして奈良博まで。
今年も正倉院展に行ってきました。
ピロティにこんなに行列ができているので一瞬たじろきましたが
最後尾から7分で入館できました。(10/28月曜日のお昼12時頃)
いつも狙って行く”比較的空いている時間帯” については
昨年のブログの最後に書いていますので参考にして下さい。
館内はそこそこ混んでいましたが、人混みが気にならないくらい
本当に眼福、至福とはこのこと・・と、毎年のことながら天平の至宝に心掴まれるひととき。奈良倶楽部に戻って仕事をしながら、また思い出しては胸の中にじんわり温かい感情が溢れ出るという「正倉院展」LOVEな私。行って来られたお客樣方と「今年もよかったですよね」とお話しするのも何より楽しみなことです。
::
では今年も、自分流鑑賞記を図録の写真とともに綴ってみましょう。
(毎年のことですが、工芸品のデザインと配色、そして「布もの」と「鳥」が好きなので そういうところに目がいってます。)
まずは、今年も「鳥」のデザインを探してしまいます。愛らしい♫
「平螺鈿背円鏡」上の写真↑の一面は、当時の姿をとどめる保存状態のいいもの。4羽の雀が大きなお花にとまっていますが、何て精巧なんでしょう!
この鏡は鎌倉時代に八面も盗まれて(えーっ!そんなことって!とついツッコミが)、盗難時に割れた一面と明治時代に修復された一面も展示されていました。
今年の出陳品の特徴は「宝物を守り伝えてきた人々の努力がうかがえる品」が多いということですが、入場早々、美しい天平の至宝とそれを守り伝えてこられた先人のたゆまない努力を感じる展示となっています。下の写真↓は明治時代に修復された一面ですが、こちらは雀のないデザインでした。
毎年、正倉院展の宝物を見て、色の組み合わせの妙に感心するのですが、今年もこの「鳥毛帖成文書屏風 とりげじょうせいぶんしょのびょうぶ」↓の地の部分(紙)の色にやられてしまいました。緑色とオレンジ色の(図録の写真とは違って)本物の色目の深いこと!
緑色は緑青ろくしょう、オレンジ色は丹たんが塗られているそうで、こういう風合いの色目は今の時代に中々出せないのではないかなと思います。ちなみに文字には日本のキジの羽毛が貼り付けられています。
お気に入りの図柄↑と
こちら↓は「檜和琴ひのきのわごん」の長側面に貼られていた、山野に遊ぶ動物や鳥を描いた「玳瑁絵たいまいえ」。
肉眼では見えにくかったけれど、小さなところにも華麗な装飾が施されて何とも溜息がでるのでした。(それにしても、どうしてこんな小さなところにも細かい絵が細密に表現されているのだろう!)
先日の「ティータイム茶論」で、五弦琵琶研究家の横山さんに
正倉院復元楽器を幾つかお持ちいただいたのですが、その中に「尺八」と「横笛」がありました。「正倉院に残る横笛には小枝が付いてますよ」とお聞きしていたので、展覧会場で確認。些細なことですが、こういうことでその楽器が急に身近に感じられます。
ポスターに使われている「漆金薄絵盤うるしきんぱくえのばん」(香を焚く台座)は、やはり素晴らしくて蓮弁に残る鮮やかな色彩にもうっとりでした。
また、お香の押し型(右)とその受け皿(左)↓も展示されていて
壁面には、実際にお香を作った様子がパネルで展示されていました。
(こちらにその様子が動画でアップされています。)
左の香炉「白石火舎」↓には今も当時の灰の大きな塊が残っていて、1300年前が ついこの前のような・・・ものすごく不思議な感覚を覚えました。
これ↓は鯨のヒゲで作った如意という孫の手のようなもの。
実際の大きさの鯨のヒゲが写真で展示されていて興味深かったです。
「蘇芳地金銀絵箱 すおうじきんぎんえのはこ」の底裏に描かれた鳳凰と獅子は、縦と横で違って見えるとか・・・奈良の情報誌「ならら10月号」で予習をしていたことをしっかり確認したり。↓
「三十足几」卯の日の儀式用の机↓
デザインがシンプルでとても美しく現代の生活にも充分マッチすると思うのです。思わず「同じ机が欲しい!」と。
その机を覆う布もまた織られた文様のデザインが素敵でした。
正倉院の鍵と錠。江戸時代に制作された海老錠には「東向北町」「手貝」「今在家町」の地名が刻まれていて、地元きたまちの職人の手によって作られたことがわかり、またまた親近感が!
この海老錠や下の「慶長櫃」↓も江戸時代制作のものですが
今回の正倉院展では 「宝物を守り伝えてきた人々の努力がうかがえる品」が中心になっていますので、天平時代の宝物以外の出陳物も多いです。
この「慶長櫃」↑は征夷大将軍になったばかりの徳川家康によって作られたもの。家康による宝庫の開検、修理と櫃の寄進などは、天下人となったことを世に知らしめる示威行為だったという見解に、「正倉院」というものが、何時の世にあっても天下人にとってかなりの最重要事項なのだということがわかって・・・(時代が違っても、これは地元民として嬉しいことと、心の中で再確認^^)
最後に布地の織り綾文様の美しさをもう一度うっとり鑑賞。
「樹下鳳凰双羊文白綾じゅかほうおうそうようもんしろあや」↓
「花喰鳥刺繡裂残片はなくいどりのししゅうぎれざんぺん」↓
残欠であるからこそ、その残された部分の美しさが際立って、刺繍糸の色も鮮やかに残って、最後の展示品に、あらためてほーっと溜息。
美しいモノを見た後の、何だか訳もなく楽しくなる気持ち。
これを誰かと共有したくて長々と自分流鑑賞記を書いてしまいましたが
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
ところで、気になる待ち時間ですが
読売新聞のサイトのこちらで確認できます。
「第65回正倉院展」
会期:10/26(土)〜11/11(月)
会場:奈良国立博物館 東新館・西新館
休館日:会期中無休
開館時間:午前9時~午後6時
※金曜日、土曜日、日曜日、祝日(10月26日・27日、11月1日・2日・3日・4日・8日・9日・10日)は午後7時まで
※入館は閉館の30分前まで
☆ 正倉院展期間中の≪ 公開講座 ≫ ★---------------------------
■ 11月2日(土)「慶長櫃が語る正倉院の歴史」
佐々田 悠氏(宮内庁正倉院事務所保存課整理室員)
■ 11月3日(日・祝)「正倉と正倉院宝物-守る・伝える-」
成瀬 正和氏(宮内庁正倉院事務所保存課長)
■ 11月9日(土)「香印坐と天平の彩り」
谷口 耕生氏(奈良国立博物館学芸部保存修理指導室長)
◇ 時間:13:30~15:00(開場は13:00)
※13:00より講堂入口にて入場券を配布します。
◇ 場所:奈良国立博物館 講堂
◇ 定員:194名(先着順)
◇ 料金:無料
※入場の際には「第65回正倉院展」の観覧券、もしくは
その半券、奈良国立博物館パスポートなどを提示。
::
奈良倶楽部では、ラウンジスペースに
正倉院展の図録や、正倉院展を特集した雑誌などを置いています。
朝食前のひとときにご自由にご覧下さい。
::
今年のオータムレイトチケットでいただいた記念品↑と
今までの記念品↓
お客様からご好意でいただいたものや買って来ていただいたものもあっての収集品ですが、こうして集まってくると嬉しいものですね。