春日若宮「おん祭」も、すでに終わって一ヶ月近くなりますが
博物館のおん祭の特別陳列、今年のテーマ”威儀物〜神前の飾り〜”について勉強しておきたいこともあり、会期終了間際に慌てて観に行ってきました。(展覧会は1/18まで)
あまり聞き慣れない名前ですが、さて「威儀物いぎもの」とは?
「祭礼において神威を高める調度品」であり、「祭礼・法会の威儀を増すために飾りつけられる諸具」をいうそうです。
おん祭でしか見られない独特の飾りもの。それぞれの飾り物には「千切台ちきりだい」や「盃台さかづきだい」「一里塚」などという固有の名前があり、それら威儀物のかたちや歴史、匠の仕事などが展覧会では紹介されています。
図録より写真で威儀物の種類を・・・
明治12年に造られた「千切台」↑
これは 京友禅の老舗「千總」(もとは千切屋と称した)本家の持つ千切台で、造花や御幣まで当時の物。
平成5年制作の「盃台」↑
季節の花を描いたヒノキ製の台上に、松竹梅の造花と奈良人形(一刀彫)を飾るのが定則。昭和63年に、当時途絶えていたものを120年ぶりに復興させた。
平成10年制作の「一里塚」↑
檜製の折敷上の素焼きの鉢に木製山形の白い台を置き、梅・松・菊を立て、根元に湯葉、高野豆腐、椎茸を置いたもの。
これらの贅を尽くした品々は、明治維新とともに無用の長物として切り捨てられていたのでしたが、おん祭850年にあたる昭和60年以来、春日大社は様々な古儀の復興を行なっており、昭和61年には「千切台」↓と「嶋台」が復興されました。
この千切台↑は、古来この台を調進した家系という由緒にちなみ、株式会社千總・十四代千切屋總左衛門から寄進を受けたということです。
屋号の元になった千切台を春日大社から文政7年(1824年)に拝領し、長年家宝としていたが、その後破損したため修繕しようとしたところ、千切台の廃絶を知り、春日大社の識者とともに故実を尋ね千切台の模作に至ったということです。そうして造られたのが昭和2年制作のもの↑。春日大社と京都の老舗呉服店との関係、千切台と千切屋についての関係も興味深いですね。
長年にわたりおん祭を少しでも元の姿に近づけたいという想いから復元された威儀物の数々ですが、用いる場席がないので、おん祭に先立つ、参勤者に装束を賜る「装束賜式」の席上で飾られているということです。
展覧会場で観て、購入した図録を読み、自分なりに学びながらまとめてみましたが、ブログ中の文章のほとんどは、図録やおん祭の解説書より引用して書いています。
また、展示内容は威儀物だけではなく、春日大社創建前後の出土品や鹿島立神影図、式年造替に関わる資料や祭具、春日信仰にまつわる美術品なども展示されています。
「おん祭と春日信仰の美術 威儀物〜神前の飾り〜」
会場:奈良国立博物館
会期:1/18まで
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
その他の展示では
「新たに修復された文化財」(1/18まで) や、地下回廊に展示されている「仏像写真展ー奈良博写真技師の眼ー」など。仏像写真がとても迫力あって素晴らしかったです。(展示は3/31まで)