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2015年11月1日日曜日

「第67回 正倉院展」へ*

「第67回 正倉院展」へ、今年も天平の至宝に会いに行ってきました。
訪れたのは会期2日目の日曜の夕方4時頃で、入場待ち時間0分。
館内はそこそこの人出がありましたが、しばらく待っていると展示ケースの真ん前で鑑賞でき、ゆっくりじっくり見入ることができました。
観賞後は庭園を見ながらお抹茶を一服。
博物館を出るときれいな月が春日山の上空に輝いていました。
帰りは 煌煌と白い光を放つ月を見ながら、そして今観てきた宝物を思い出しながら、天平時代の工人・職人に想いを馳せて、東大寺境内を歩いて帰ったのでした。
(天平時代の貴人たちにではなく、この宝物をつくってこられた名もなき職人達への想いに気持ちがシフトするのが自分らしいですよね。)
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では恒例の、自分流鑑賞記を図録の写真とともに綴ってみましょう。
私は正倉院宝物のデザインや色の美的センス、美意識の高さにいつもうっとりさせられるのですが、今年は特に大好きな布物が充実していて大満足だったのでした。
まずは、「間縫刺繍羅帯残欠」まぬいのししゅうらのおびざんけつ
細長い帯に花卉や花喰鳥の刺繍が美しく残っていて、溜息つきながら眺めていました。帯自体は2種類の羅を矢羽根状に縫い繫いで、両端は剣先形にしてあります。(この美しい刺繍の様子は宮内庁のサイトのこちらで詳しくご覧いただけます。)
「琥碧魚形」こはくのうおがた
高位の人々が身につけた佩飾具はいしょくぐ
繋着紐つなぎひもには、褐色羅かっしょくのらが結びつけられていて、これが上の間縫刺繡羅帯残欠と同じもので、もとは両者が一連のものであったことが分かります。
豪華な刺繍の細帯にじゃらじゃらとお洒落な装飾品をぶら下げた貴人たちの様子を、思わず想像してしまいますね。

「布袴 附 獣毛片」
これ、麻の袴の裾に獣毛の房が飾りとして付けられているのです。こういう装飾が当時のお洒落だったのかなと想像膨らませています。
「錦表黄氈心残欠」にしきのおもてきせんのしんざんけつ
脇息に使われた敷物の残欠だそうで、文様の配色が美しい!
「花氈」かせん
花氈とは文様の入ったフェルトの敷物のこと。
蓮華唐草文様が藍色という配色の渋さにまた魅入ってしまいました。
地となるフェルトには、十分にほぐされていない粗い羊毛が使われて、種子類の混入が発見されています。(写真右下)
大きな針や糸なども出展されていました。これらは手芸・裁縫の上達を祈る「乞巧奠きつこうでん」という七夕の行事に使用されたものだそうです。
「紅牙撥鏤尺 」こうげばちるのしゃく
撥鏤ばちるのものさしも一点出ていました。1000年以上経っても変わらない赤色が本当に綺麗ですね。この撥鏤尺の裏面には飛天が表されていて、ユニークな表情にそそられました。ちなみに正倉院に伝わる8枚の撥鏤尺の中で飛天が表されているのはこれ一点のみだそうです。
他に犀の角で作られた「斑犀尺はんさいのしゃく」(写真左)や木のものさし「木尺もくしゃく」(写真右)も出陳されていて、様々な表情のものさしを見比べることができます。
「七条褐色紬袈裟」しちじょうかっしょくのつむぎのけさ
『国家珍宝帳』の筆頭に記される聖武天皇ご所持の袈裟のうちの1領で、「金剛智三蔵袈裟」と注記される、大変由緒のあるもの。
「紬」の袈裟と記されていますが、実際には薄い絹物である「羅」でできています。
個人的なことですが、韓国で初めてポジャギに出会った時に絹織物に色々な名前がついていて(「紗」にも織り方によってカプサやオクサなど色々な名前があり)、「羅」という絹の名前も耳にしていたことを思い出しながら、その複雑な織り方をじっくり拝見したのでした。
布もの以外に心惹かれたのは「磁塔残欠」という小塔の美しさ。
「玳瑁竹形如意 」たいまいのたけがたにょい
ウミガメの一種であるタイマイの背甲で作られた如意や
蛇紋岩じゃもんがんという石でつくられた横笛や尺八も
用いられた素材も面白いし、それに施された文様や、わざわざ竹の節をつくるところなどに職人のこだわりを感じます。
「紫檀木画槽琵琶 」したんもくがそうのびわ
最後に、やっぱりこの琵琶の素晴らしさも一言添えておきたいと思います。背面にびっしりと配された小花文が何かと話題になっていますが。それはさておき、やはり精緻を極めた木画の素晴らしさには圧倒されるのでした。
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おまけの画像>>
オータムレイトチケット購入でついてくる今年の記念品はこちら。
「第67回 正倉院展」
会期:10/24(土)〜11/9(月)会期中無休
時間:9:00~18:00(金土日祝日は19:00まで)入館は閉館30分前まで
*待ち時間はこちらから**