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2011年7月6日水曜日

転害門のでこぼこの柱*

奈良倶楽部から徒歩10分のところに建つ、国宝「転害門てがいもん
天平時代に造られた当時の姿をそのままに残しています。

ついでに、同じく徒歩10分圏内の「正倉院」も天平時代建立で
うちからこんなに近くに天平時代の建物がそのまま残っているって
「どうよ!」という顔を、ついしてしまいそうになりますが。

でも今日は、そんな「どや」話ではなく
転害門のぼこぼこの節だらけの柱についてのお話です。
こちら↑ 西向きの柱の一番南側だけこのような節だらけの柱です。

先日放送の「たけしのアートビート」に出演された宮大工棟梁の小川三夫さんが、この番組の中で、転害門の一番南側の柱のことを紹介されていたそうです。(私自身はテレビを見ていなくて、夫からの又聞きです)

わざわざ節だらけの面を柱の目立つ南側に持ってきたのは・・・。
1300年前の職人は、木が育っていた環境に合わせて柱の向きを決めて、それが先行きのひずみを生まない秘訣になるのだそうです。

古代建築が長持ちするのは「木は生育の方位のままに使え」という言葉を守っているからだそうで、木の生育は、陽が当たる南の面と当たらない北の面とでは違って、よく陽が当たる南の面はよく成長するので当然枝もたくさん出て木材にしたときも節だらけになり、それを南側に使うことによって、陽射しが当たっても木材が弱らないということなのだそうです。(反対に、今まで一度も陽が当たったことのない木の北面を、南側に面する建築物に使うと、急に弱るのだそうです。)

・・・というような意味のことを夫から聞いて
なるほど〜!あのぼこぼこの意味がようやくわかりました。
転害門表側の西向きの南側の一本だけがぼこぼこで↑
裏側の東向きの柱はみな綺麗な木材です。↓

この一本の柱から、遥か1300年前の大工さん達の息づかいが
今にも伝わってきそうで すごいですね!
教えていただいて今までと見る視点が断然違ってくるから不思議です。

・・・という訳でこの後、私は・・・。

古代建築のでこぼこや柱が気になってしょうがない(笑)
二月堂の手すりの使い込まれたでこぼこ↑や、踏まれ込まれた床面↓
 二月堂の柱は江戸時代の再建なのでこんな風な形↓

鎌倉時代再建の東大寺南大門の柱はどっしり美しい形。↓

大仏殿中門の内側の柱はパッチワーク模様↓

江戸時代再建の大仏殿内部の柱もどっしり魅力的↓

ところで、気になって色々見ても、転害門のように節だらけの木材を柱に使っている所は他に見当たりませんでした。(天平時代建立の唐招提寺も、室町時代再建の喜光寺も)
これは転害門が西向きの門で、南側が正面ではないからでしょうか。
南側正面の柱が全部、節だらけでしたら、あまり美しい建築とはいえませんものね。

でもこうしてちょっとした知識を得てまた周りの古代建築を違った目で見る楽しみができました。