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2012年2月29日水曜日

二月堂修二会2012*「大中臣祓」

29日18:00頃に「大中臣祓おおなかとみのはらえ」という
祓い清めの儀式が二月堂下、食堂西側の場所で行われました。









2009年に一度拝見させていただいているのですが
祓いの作法を司る「咒師しゅし」が、祓い清めの儀式の途中で
左肩に掛けていた袈裟を外して「僧から神職に変わる」瞬間を
もう一度しっかり見てみたいと思っていました。そして、祓松明を持つ「小綱しょうこう」さんの晴れ姿も。(小綱さんは息子の同級生・・)

厳粛な宗教作法をこのような気持ちで見てしまうことに
少々の後ろめたさも感じながら拝見。

でも練行衆の方々が細殿の壁沿い南向きに一列に並ばれて
大きな身を屈めての蹲踞合掌のお姿や
咒師が松明の火に照らされ祓詞を黙読されているお姿
御幣を振りながら練行衆を祓い清めていく様子など
とても静かで厳かで、やはり有り難いものだと思いました。

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「大中臣祓」の作法については2009年のブログに詳細をアップしていますので、そちらを参考にして下さい。こちら→
また、「大中臣祓」は別名「天狗寄せ」ともいうそうです。
春を待ちかねて天狗が集まって嵐を呼び、修二会の邪魔をしたことから
天狗を呼び寄せてお祓いしたという伝説があります。

鹿のお喋り*「参籠宿所入り」後の二月堂で


練行衆が別火坊より参籠宿所に入られて
二月堂周辺は一気に活気満ち溢れる場となります。
   

    

法会に携わる人たちだけでなく
参籠宿所入りを見学しようと観光客や追っかけさん(私もですが^^)
カメラマン達も大勢来られて賑やかな二月堂。

そんな慌ただしい雰囲気に臆することもなく
鹿の母仔がのんびりとお喋りしています。

「お母さん、何だか今日は人が多いね」


「今日からね、始まるのよ。二月堂で」
「え?何が始まるの?何でみんなバタバタしているの?」


「これよ、これ!おこぼれがもらえるのが始まるのよ」
「あら?まだ何も入ってないじゃない!」


「え?何がもらえるの?ここに何が入ってるの?」


「ちょっと〜すみませーん。何も入ってないですよー」


「え、なんや、なんや。何が貰えるんや」
と集まる鹿たち。

「写真ばっかり撮ってないで何か頂戴♡」
とか何とか言ったかどうかわかりませんが

厳格にして厳粛な法会が始まるこの場所に
何ともゆるやかで微笑ましい情景が繰り広げられ
これこそが「奈良にシカない宝物」かもしれません。

二月堂修二会2012*練行衆参籠宿所入り


2月29日15:30、別火坊から二月堂下の参籠宿所に移られる
練行衆のお姿を大仏殿裏で拝見させていただきました。

和上さまを先頭に一列に無言で歩みを進める練行衆の方々。



参籠宿所前でお待ちの娑婆古練しゃばこれん(その年に参籠しない僧)に
無言で一礼してそれぞれの部屋に入っていかれました。 

いよいよ、修二会本行が始まるのですね。

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佐藤道子先生の『東大寺 お水取り 春を待つ祈りと懺悔の法会』の中に

・・・とりたてていうべきお作法もなく、無言で歩みを進める行列に、なぜそれほど強烈な感動を覚えたのか、と自問しました。思い至ったのは、この一団を包む「慎ましやかな覚悟」、とでもいうべき雰囲気でした。今時こんな世界がある、と驚き反応し、そのままのめり込んでしまったように思います。

という一文があります。
粛々と無言で参籠宿所入りされる練行衆の行列に接したことが
「お水取り」に携わる原体験になったと仰る佐藤道子先生。
この一団を包む「慎ましやかな覚悟」。
先生が45年も前に感動された雰囲気は、今もそのままだと思うのです。

2012年2月28日火曜日

3月のお出かけ情報③〜寺社伝統行事



◇3/1~3/14 東大寺二月堂「修二会(お水取り)」

◇3/1~3/18 法華寺「古代ひな人形展」
歴代天皇より賜った御所人形など約100点が展示されます。
問合せ:0742-33-2261

◇3/2 10:30〜 喜光寺「行基会大祭」
中風除・ガン封じの祈祷・住職の法話や、おぜんざいの接待
14:00~柴燈大護摩会  15:00~火渡り
問合せ:0742-45-4630

◇3/5 10:00~ 興福寺本坊北客殿「三蔵会」
問合せ:0742-22-7755

◇3/9 14:00~15:30 正暦寺「人形供養」
問合せ:0742-62-9569

◇3/10 初午厄除祭

◇3/10 14:00〜 大安寺「馬頭観音厄除法要」
馬が牧草を食むように諸々の悪を食いつくし災厄を除く厄除の仏様として信仰されている馬頭観音像。法要では護摩が焚かれ災厄除けの「秘文神符」が授与される。
問合せ:0742-61-6312

◇3/11 14:30〜 東大寺大仏殿「東日本大震災一周忌物故者法要」
被災地の一日も早い復興を祈り亡くなられた方々への廻向を行います。
地震発生時刻の14:46に東大寺の大鐘を撞き鳴らし
法要後には近藤等則氏によるトランペットの追悼演奏が奉納されます。

◇3/13 9:00~ 春日大社「春日祭(申祭)」
王朝絵巻さながらの春日大社の例祭です。
参道からのみ拝観可能。
問合せ:0742-22-7788

◇3/15 11:00~ 春日大社「御田植祭」

◇3/18 10:00~正午 宝山寺「般若窟柴燈大護摩供」
問合せ:0743-73-2006

◇3/20 菅原天満宮筆まつり
毛筆作りの元祖として仰がれている中国の蒙恬画像を拝殿に掲げ、祭典が行われ、その後参拝者は書の上達を祈願する。当日は使用済みの筆を無料で新しい筆と交換してくれる。使用済みの筆は筆塚の前に集めて供養され、筆に感謝の意をささげ、護摩火の中に投げられる。
問合せ:0742-45-3567

◇3/21 8:00~ 長谷寺「弘法大師 正御影供」
問合せ:0744-47-7001

◇3/22~3/24 法隆寺「お会式」
聖徳太子の遺徳を讃えて行う法要。
聖霊院では本尊聖徳太子摂政像が開扉。
問合せ:0745-75-2555

◇3/25・3/26  安部文殊院「文殊お会式」
両日とも16:30から智恵のお餅まきが行われる。
問合せ:0744-43-0002

◇3/28 13:00~ 薬師寺金堂「お身ぬぐい」
問合せ:0742-33-6001

◇3/30~4/5 薬師寺金堂「修二会 花会式」

二月堂修二会2012*2度目の「社参」

3/1から二月堂で行われる修二会「本行」へ向けての準備期間である「前行」は、また「別火」とも呼ばれ、期間を二つに分けて
2/20~2/25(閏年は〜2/26)を「試別火ころべっか
2/26~2/28(閏年は2/27〜2/29)を「総別火そうべっか」と区別します。



この「別火」期間中、別火坊の中で行われる儀式などは一般に見学することはできませんが、「社参」など、練行衆が東大寺境内を巡拝される様子は、私達も拝見することができます。



「試別火ころべっか」から「総別火そうべっか」へ。
行としての規制がさらに厳しくなる「総別火」の前日の社参は
開山堂参拝の後に、練行衆は各自坊に戻って、また夕刻に別火坊へ戻るまでのつかの間のひとときをご家族と一緒に過ごされます。



一昨年の社参は、開山堂参拝のところから拝見させていただきました。
今年も時間的な制約があって、戒壇院別火坊を出発され八幡殿を参拝されるところまでの見学でしたが、練行衆の方々が無言で一列になって歩いて行かれる姿は、とても静かな洗練された動きで、粛々と身が引き締まるような気持ちになりました。



一昨年の社参でも「開山堂へ参拝され後、一同 輪になって一斉に会釈。そしてさっと解散」された無駄のない動きに、少々感銘を受けた覚えがあるのですが、こういう不思議な感覚を時々感じるのが、修二会の魅力の一つかもしれません。

2012年2月27日月曜日

二月堂修二会期間中の奈良倶楽部*


毎年ブログで書いているので繰り返しになりますが
二月堂修二会本行(お水取り)期間中の奈良倶楽部について++

奈良倶楽部は、二月堂まで歩いて15分という距離にあるため
練行衆上堂のお松明の見学だけではなく
深夜の行を聴聞されるお客さまも多くお泊まりいただいています。

また、まったく初めての方も多くいらっしゃいますので「お水取り」を堪能していただくためにできるだけのサポートを心がけています。


期間中の奈良倶楽部では**

◇深夜の行にお出かけのお客さまのために門限フリーにしています。
(ただし、23:00までにチェックインをお済ませ下さい。)

◇お部屋に電気ポットやお茶のご用意の他に
この期間だけ、身体がほっと暖まる「生姜湯」をサービス。

◇ふだんの朝食の時間は午前8:00頃ですが、
3/12、13、14日にご宿泊の方の朝食は8:00~8:30と
少しごゆっくりめにも対応致します。素泊まりでも承っています。

◇修二会関係の写真集や解説書などたくさん揃えております。
期間中の行法のタイムスケジュール表などもご用意しております。

過去記事ですが奈良倶楽部通信内の修二会についての記事を以下に記します。
修二会期間中は仕事も忙しく、まだまだ知らない行の方が多いし
今年も、どれだけ二月堂に出かけられるかわかりませんが
これからも焦らず時間のある時に出かけて行ければと思っています。

修二会の豆知識など(2008,2/18記)
修二会本行について(2008年3/1記)
お松明についてのよくある質問(2008年2/24記)
お松明を作る童子さんの話(2008,2/26記)
籠松明の部品作り(2010年,3/6記)
食堂作法について(2008,3/3記)
★お昼の二月堂での行法(2010年,3/4記
★舞台の上から見たお松明(2008年2009年2010年
★舞台の真下で見たお松明(2010年 2011年
★「お声明」を聴く(2008,3/4 2008,3/12
★「過去帳」聴聞(2011年3/5
「上七日」と「下七日」(2008,3/8)
「小観音」さんのお松明(2010,3/7)
「小観音後入」(2011年3/7)
「籠松明」と「達陀松明」(2008,3/9)
★「達陀(だったん)」の様子(2008年2009年 の3/14)
「良弁杉伝説と尻焦がし松明」・・3/14のお松明は10本全部舞台の上に揃います。
「尻焦がし松明」を初めて見る(2010年3/15記)
「牛玉札(ごおうふだ)」の写真
「達陀帽戴かせ」について(2008,3/15記)
★「修二会満行」(2010年

最後に・・・
3月といえども完全防寒着でお越し下さい。
お松明見学では戸外でじっと立って待っていなければいけません。
奈良の夕刻は3月といえども大変冷え込みます。
また深夜の行を聴聞するために二月堂内に籠られる方も
堂内でも、じっとしているとかなり冷え込みますので
念には念を入れるくらいの防寒対策をしっかりしてお越し下さい。

3月のお出かけ情報②〜イベントのご案内



◇〜3/20月曜日を除く毎朝10:00~ 約15分間「鹿寄せ」
場所:奈良公園飛火野 春日大社参道南側
問合せ:奈良の鹿愛護会 0742-22-2388
鹿寄せのブログ内記事はこちら

◇〜3/4 大和郡山市旧市街地周辺 「大和な雛まつり」
公開日時は各展示会場によって違いますのでご注意下さい。

◇〜3/4 9:00~16:00 奈良県立民俗博物館「古民家でひな祭り」
民俗博物館内に移築された旧臼井家住宅(重文)でのひな祭り。
期間中は、旧臼井家住宅の居室部に上がれます。
見学無料。雛人形との撮影もできます。月曜休館。
問合せ: 0743-53-3171

◇3/1~3/31 10:00~16:00 高取町土佐街なみ「町家の雛めぐり」
かつて2万5千石の城下町として栄えた土佐の街並み。
その町家で大切に保管されたひな人形。
約100軒のお雛様を町並みのあちこちに展示しています。見学無料。
2009年に訪れた時のブログ内記事はこちらに。

◇3/4 13:00~17:00「きたまち大学校」

◇3/10・3/11「ならサローネ」
「奈良を拠点に活動する表現者のための交流の場をつくる」をコンセプトに、奈良市街地の会場で100組の活動を紹介するパネル展示と、プレゼンセッションを軸としたフォーラムが開催されます。

◇3/17~12/9 9:00~17:00 若草山「開山」

◇3/16〜3/18 若草山「鹿せんべいとばし大会」
9:30受付 10:00スタート 
参加費300円、先着1000名。雨天の場合は延期。
問合せ:0742-22-3626

2012年2月26日日曜日

3月のお出かけ情報①〜秘宝秘仏特別公開

春まだ浅き奈良大和路の寺社特別拝観のご案内です。
奈良旅行のご参考にどうぞ++



◇3/1~3/15 帯解寺「秘仏特別公開」
安産祈願の古寺で、本尊の地蔵菩薩(重文)はじめ、三面六臂大黒天蔵や虚空蔵菩薩坐像などの秘仏、春日赤童子画像などの仏画が特別公開されます。
問合せ:0742-61-3861

◇3/1~3/20 薬師寺西塔内陣特別拝観
午前11時・午後1時・午後3時(各30分公開)

◇3/1~3/31 大安寺「馬頭観音立像特別公開」
天平時代の秘仏 日本最古の馬頭観音立像を特別開扉。
問合せ:0742-61-6312

◇3/1~3/31 不退寺「春季特別公開」
在原業平画像や伊勢物語、古今和歌集などが公開される。
問合せ:0742-22-5278

◇3/1〜6/30 薬師寺「玄奘三蔵院伽藍・大唐西域壁画公開」
平山郁夫画伯の大唐西域壁画の公開です。
問合せ:0742-33-6001

◇3/10 慈眼寺「聖観世音菩薩特別公開」
問合せ:0742-26-2936

◇3/12  伝香寺「地蔵菩薩像特別公開」
奈良の三大名椿のひとつ散り椿で著名なお寺。
「はだか地蔵尊」と愛称される地蔵菩薩像(重文)が特別開帳。
問合せ:0742-22-1120

◇3/17〜4/22 室生寺「金堂外陣からの特別拝観」
間近に金堂内の諸仏を拝観できます。
問合せ:0745-93-2003

◇3/17〜5/31 長谷寺「春季特別寺宝展」
大観音特別拝観、大観音の大画軸(高さ16m)も公開。
問合せ:0744-47-7001

◇3/20~4/7 法華寺「国宝十一面観音立像特別開扉」
光明皇后の姿を彫り上げた伝わる平安初期の仏像です。
問合せ:0742-33-2261

◇3/20~6/30 法隆寺「大宝蔵殿での秘宝展」
国宝・重文指定される宝物が2300点余りある法隆寺で、通常拝観できない寺宝が春と秋の年2回特別公開されます。
問合せ:0745-75-2555

◇3/21~5/20 浄瑠璃寺「秘仏吉祥天女像特別公開」
吉祥天女像厨子の扉絵も一見の価値ありです。
◇3/21     浄瑠璃寺「国宝三重塔初層開扉日」
問合せ:0774-76-2390

◇3/23~4/7 海龍王寺「十一面観音特別開帳」
錐金文様の美しい仏様です。境内の雪柳も見頃でしょうか。
問合せ:0742-33-5765

◇3/24~4/8 薬師寺「大宝蔵殿特別開扉」
問合せ:0742-33-6001

◇3/31〜6/7 金峯山寺「蔵王堂秘仏本尊特別開帳」
問合せ:0746-32-8371

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トップの画像は海龍王寺境内の雪柳(2008年4/3撮影)です。
ブログでは、特別公開される日付順に記載していますが
特別公開の時間や拝観料、寺社の場所などは各サイトでお調べ下さい。

2012年2月25日土曜日

東大寺ミュージアム特集展示「二月堂修二会」



二月堂修二会は大仏開眼の年(752年)に始められ今年で1261回目。
「不退の行法」として一度も途絶えることなく続けられてきました。
その間には幾度となく存続の危機があり、中でも最大の危機は
1667年の行法中に起きた二月堂の炎上、焼失。お堂がなくなり
必要な道具類もほとんど失い、継続困難な状況に陥りながらも
中断されることなく三月堂で続行されました。

東大寺ミュージアム特集展示「二月堂修二会」では
この炎上時の様子を克明に記した「二月堂修中練行衆日記」(重文、期間中に入れ替え有り。ブログの下段に追記あり)が見られます。全文を読み解くにはわかりにくい部分もありましたが、文字を追っているだけでも、二月堂の炎上、焼失を目の当たりにした人々の生々しい気持ちが伝わってきます。

他には焼け跡から救い出された「二月堂焼経」(重文)や
二月堂再建のための設計図などが展示されています。
焼失からわずか2年後には再建されているのですから
修二会行法継続への人々の熱意は大変なものだったのですね。

東大寺ミュージアムの開館時間は
修二会期間中(3/1〜3/14)9:30から19:00までに延長されます。

トップの画像は東大寺ミュージアム前に展示してある「籠松明」


        
12日の夜に上がる「籠松明」は根付きの竹の先端に、杉の葉やヘギ・杉の薄板で籠目状に仕上げた松明で、長さ8m、重さ60kgにもなります。
その迫力ある大きさを間近でご覧になって下さい。

「籠松明」は1日から4日までの毎朝、童子さんが少しずつ部品を作って、8日の朝に組み立てられます。この様子を一昨年のブログでアップしていますのでよかったらご覧下さい→

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展示の中に「東大寺寺中寺外惣絵図」という江戸時代の絵図があり
我が町内「北御門町」も載っているのですが
建物は五劫院のみで後は田畑のようでした。
ただ北御門町の名前の由来通り、五劫院の角には「北大門」の記載があって、東大寺の北のご門があった所ということが確かめられました。
当時は「北之御門村」ということでした。

追記:
練行衆が修二会期間中に起きた出来事を書いた日記「二月堂修中練行衆日記」ですが、2/28〜3/14の期間は平氏の「南都焼き打ち」(1180年12月)の様子を記した日記が展示されます。
日記には「28日に奈良坂、般若寺近くに僧兵が引き上げたところ、平氏が村に火を放ち、東大寺、興福寺まで燃えていった」などと描写されていて、こちらも拝見するのが楽しみです。
また、27日まで展示中の、二月堂炎上時の様子を克明に記した「二月堂修中練行衆日記」は3/15〜4/1の期間に再展示されます。

2012年2月24日金曜日

春を呼ぶ*



「お水取り」は大和に春を呼ぶ行事として知られていますが
うららかな陽気の今日は、まさしくお水取り日和な一日。
春がもうすぐそこに来ているようでした。


二月堂への参詣道には結界の注連縄が張り渡されていましたが

今日はあたたかな陽射しが降り注いでいるせいか、二月堂周辺は
穏やかな空気に包まれて、どこかのんびりのどかな佇まいです。


ところで、今年は閏年にあたりますので
2回目の社参は例年と違って2月26日に行なわれます。

同じ26日の日曜日には、二月堂近くの若草山で自転車競技の「若草山ヒルクライム」が開催され、二月堂周辺道路では交通規制もありますので、お出かけには十分ご注意下さい。
また当日8:00~16:00の間、奈良奥山ドライブウェーは車両全面通行止めになっています。

2012年2月23日木曜日

私の修二会*「奈良旅手帖」コラムより



「奈良旅手帖2012」掲載の3月のコラムより++


「お水取り」が始まる3月1日から満行までの15日間。
東大寺二月堂周辺に漂う一種独特の雰囲気は
一言では言い表せられない何か不思議な磁力で満ち溢れている。

ピーンと張りつめた緊張感、厳粛にして清浄な世界。
かといって神秘的で宗教的なだけであるかといえばそれだけでもなく
湯屋や参籠宿所では「お水取り」を支える人達が
朝早くからそれぞれの役割を甲斐甲斐しく果たして
この時期の二月堂あたり一帯には、生き生きとした活気や賑わいも溢れているのである。

多くの参拝者にとって、毎晩上がるお松明の夜空を焦がす炎の美しさは
毎年見ても見飽きず何度見ても感動してしまう心湧き立つもの。

でも「お水取り」の本当の凄さとは、このお松明の後
二月堂の堂内で11人の練行衆による祈りの法会「十一面悔過法要」にこそあるのである。
深夜にまで及ぶ厳しい祈りの行は、752年に始められて以降
今まで一度も途絶えることなく続く「不退の行法」。

南無観南無観・・・と唱えられる声明のリズムに身を委ね
練行衆の捧げる祈りに心を寄せる。
今年で1261回と連綿と続く歴史の一瞬に我が身を置くことができる喜び。「お水取り」の行事の持つ厳粛で深遠な魔力に惹き寄せられて、今年もここに来られることの有り難さ。
三月の奈良で是非訪れていただきたい場所こそは二月堂である。

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何月でもいいから、その月の奈良のお奨めの場所を書いてほしいと
昨年「奈良旅手帖」の生駒さんから原稿依頼を頂いた時に
私が迷わず選んだのは、三月のコラム、場所は二月堂でした。

二月堂の近くに奈良倶楽部を開業して20年余り。この間
「お水取りがとにかく好きで」という多くのお客様に接して
私も少しずつですが、時間を作っては二月堂に通い
お水取りの魅力(魔力?磁力?)に取り憑かれて参りました。

修二会に私が感じる魅力を、限られた字数の中で上手く表現できたかわかりませんが、この原稿を書いていた8月の真夏の数日間、春まだ浅い二月堂を取り巻く緊張感を想像しては気持ちが浮き立っていたことは確かで、これもまた有り難い出来事でした。

2012年2月22日水曜日

平城宮跡資料館*「文化財レスキュー展」のお知らせ

久しぶりに平城宮跡資料館へ。


中に入ったところのロビーには、簡単にですが、東日本大震災で被災した文化財の救済事業「文化財レスキュー」に参加した奈良文化財研究所(奈文研)の活動がパネル展示してあります。





ボランティアガイドさんから奈文研の保存処理技術の素晴らしさを聞き
3/10から始まる次回の企画展「文化財レスキュー展」では
現地での救援活動や現在も続く保存処理など、救済にあたった奈文研職員の声を交えながら紹介されるということで、是非もう一度足を運ばなくてはと思いました。

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「発掘速報展平城2011/文化財レスキュー展」

会場:平城宮跡資料館 企画展示室
開催期間:2012年3月10日(土)~5月27日(日)
休館日:月曜休館(月曜が祝日の場合は火曜日休館)
開催時間:9:00~16:30(入館は16:00まで)
ギャラリートーク:毎週金曜日14:30~(但し5/4は除く)
詳細はこちら

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ところで木簡にもかなりユニークなものが描かれているのですね。
マンガのような顔を見て、奈良時代の人が急に身近に感じたり。









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そしてこの日は2月22日にゃんにゃん記念日。
入口ではにゃんちゃんが熱烈歓迎してくれたのでした。

2012年2月20日月曜日

今朝の戒壇院別火坊

二月堂修二会(お水取り)の本行を前に
いよいよ今日から「別火」と呼ばれる前行が始まります。

東大寺戒壇院の別火坊に練行衆一同が入られる「別火入り」は
夕方遅く(19:00頃)の時間。私はちょうど仕事中の時間ですので
お散歩がてら、午前中の別火坊の様子を覗いてきました。

戒壇院の辺りは夕刻の「別火入り」を前に準備に慌ただしく
一種独特の雰囲気が漂っているように感じます。
お邪魔にならないよう許可を得て一枚撮影させていただきました。

この長い竹の箒は二月堂内を掃除する時に使うもの。
奥には、明日の「社参・試みの湯」の後に
遠敷神社から撒かれる注連縄も見えます。

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帰り道、すぐそばの大仏池の向こう岸に見える鹿の群れ。

なんとものんびりな様子に思わず頬も緩みます。

今朝の大仏池の風景
柔らかな優しい光に包まれて、小さな春を感じました。

2012年2月19日日曜日

「やまとの地宝」展*奈良県立美術館



「奈良」をイメージする時、住んでいる場所柄もあるのですが、私の場合は「天平文化華やかし頃の奈良」の比重が大きくて仏教美術への興味は尽きないのですが、考古学的な「原始・古代の奈良」への興味は薄かったりします。

ところが、つい先日「唐古・鍵考古学ミュージアム」に行ってから、石器時代や縄文時代、そして弥生時代から古墳時代にかけての奈良について、具体的にイメージを膨らませることができるようになって、「古代の奈良」が俄然面白くなってきたのでした。

そんな私にとてもタイムリーな展覧会が・・・!
奈良県立美術館で開催中の「やまとの地宝」展では、すべて奈良県内の遺跡から出土したものばかりを展示して、古代奈良の歴史や文化の全容が体感できるようになっているのです。
遺跡から出土した膨大な量の遺物から、そこに息づいていた人々の営みを想像するのは楽しいですね。

気に入った展覧会を鑑賞するとテンションが高くなって
つい感動を熱心に伝えたくなるタイプなのですが
言葉で上手く表現できないところは「百聞は一見にしかず」で画像多用派になってしまいます。今回も展覧会場で購入した図録から写真を多用して、展覧会の様子を少し紹介させて下さい。

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歴史の時系列で見ていくと・・・
奈良には旧石器時代の石器(二上山麓で産出される讃岐岩で作られた香芝市・桜ヶ丘遺跡出土の石器)や、縄文時代の土器もたくさん出土しているのですね。

こちらは橿原市・観音寺本馬遺跡出土の縄文時代の土偶(重文)
目と口だけで表現されているけれど力強いものを感じます。

そして弥生時代。「唐古・鍵考古学ミュージアム」にもあった絵画土器と同じようなものが天理や橿原市の遺跡からも出土しています。
こちらは天理市・清水風遺跡から出土の鳥装の人物が描かれた土器。


これが今回是非見ておきたかった
「唐古・鍵考古学ミュージアム」から貸し出されている
翡翠製勾玉と褐鉄鉱容器。↓この勾玉は
弥生時代における最大・最良質級のものだそうです。


古墳時代の出土品も盛り沢山でした。

水晶でできた装身具や
埴輪も種類が多かったです。

三宅町石見遺跡から出土の椅子に座る男性埴輪↑や
大和高田市池田9号墳から出土の武人埴輪↓


こちらもお目当てでした。
藤ノ木古墳や黒塚古墳からの出土品の本物の数々を見たかったのです。

藤ノ木古墳(6C後半)から出土の金銅副葬品(国宝)や↑
(その他に復元品もたくさん展示されていて、藤ノ木古墳の副葬品の全容がある程度理解できます。)

34面の銅鏡が出土して注目された天理市黒塚古墳の
三角縁神獣鏡(重文)↓もたくさん展示されていて満足〜。


ちょっと面白いと思ったのが
葛城市の三ツ塚古墳群(7C末)から出土の漆塗り革袋。


それから、このガラス製品も。

橿原市の新沢千塚126号墳(5C中ば)から出土したガラス製の容器。
(展示品は複製品ですが原品は東京国立博物館にあって重要文化財)
中国からもたらされたペルシャ製品だそうですが
奈良時代の正倉院御物に通じていてとても興味深いです。
(朝鮮半島の亡命王族が被葬者という説もあるこの古墳からは、ガラス製容器や金製装身具など国際色豊かな副葬品が出土しているそうです。)

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ところで奈良県内には一体いくつの古墳があるのだろう?
一つの古墳から出土する遺物の数も相当数だし
その遺物が語る奈良の歴史もこれまた深くて興味が尽きない。
本当にその名の通り「やまとの地宝」だと思いました。
展覧会を見て、宝の山の奈良の地が少々誇らしく思えたのでした。

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「やまとの地宝」展は3/20まで。
展覧会の詳細はこちらでご覧下さい。→

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<<おまけの画像>>
県立美術館から歩いてすぐのところ。
以前「余茂宜」さんがあったお店が新しく開店するようです。