5日 夜の9時過ぎ。
正倉院を抜けて二月堂へ。
真っ暗の夜道を一人歩く。静かだ。
裏参道大湯屋辺りまで来ると、途端に
場の空気感が変わったように感じるから自分でも不思議。
川の流れる水の音の心地よさが
小さなこだわりをほぐしてくれて
今年もここへ来れることの有り難さを素直に喜べるようになる。
22年目にして初めて過去帳を二月堂 東の局にて聴聞。
神名帳、過去帳、諷誦文と初夜の大導師作法。
続いて咒師作法にて法螺貝のププーと吹き合わされる音。
振り鳴らされる鈴の音。
今回は全く見えない場所で、と決めて
耳を頼りにしばし堂内の人となる。
明日の仕事のことを思うと最後まで居ることはできず
今日はここまでと、日付が変わる前に二月堂を下りると
そこには・・・。
二月堂湯屋の前にて深夜の食事中の鹿たち。
これは、食作法の残りご飯。
鹿たちへの施食として用意されているのだそうです。
初めての「過去帳」
耳が慣れてないのか、知っている言葉は耳に届くのだけれど
「青衣の女人」の名は聞き漏らしてしまいました。
「源頼朝」の名前を確認してから18人目。はっと気がついたら
局の中の聴聞者達、多くの人達が立ち上がって出て行かれるところ。
あぁきっともうお名前を読み上げられた後だったのだ・・・。
翌朝の奈良倶楽部では
何組かのお客樣方が昨晩の過去帳を聴聞されたようでしたが
皆さん初めてで、どなたも「青衣の女人」がわからなかったと
そんな話題で盛り上がる朝食の席でした。
夕方お弁当を取りに来られた方達は、偶然にもお二人とも
日吉館の時代から修二会に通う方達で
そのようなことをお話しましたら「何度も通ううちに耳が慣れてきて
わかるようになりますよ」とおっしゃって下さった。
22年目にして初めての「過去帳」聴聞。
一つの伝説である「青衣の女人」にこだわらなくても
全体の雰囲気を知り、その中に身を置けばいいのだと納得。
反対に、そこだけを目当ての人達は、それが終わるともう用はないと
ばかりに引き上げられるので、こういう聴聞の仕方も淋しいなとも。
また土曜日と重なったこともあって
局に入られる方が非常に多かったのですが
一つ気をつけないといけないなと思うことがあります。
自分の靴を袋に入れる時に、それがビニール袋だとカサカサと
音が耳に障りますので、局の扉を開ける前に袋に靴を入れてから
静かに扉を開けて入って行かないとと思いました。
何度も経験しているので私は布袋を用意していますが
旅の方だと用意がなかったりしますので
ちょっとした気遣いのご用意をお願いできればと思いました。