三好和義写真展「天平の楽園・東大寺と正倉院」に先駆けて
入江泰吉旧居にて三好和義さんの講演会がありました。
(トップの写真↑は三好和義さんのFBページより拝借)
お話を聞きに来られている方は、皆さん、素晴らしいカメラの腕前をお持ちの方ばかりで、参加にちょこっと躊躇したところもあったのですが、旧居コーディネーターさんから「レポートしてね」と後押しされて、しっかりお話を伺ってきました。
(←写真提供:吉田遊福さん)
三好さんは「楽園」をテーマに撮影されている写真家で、今回の写真展のタイトルもずばり「天平の楽園」。
中学生の時から、徳島から夜行船に乗って東大寺に遊びに来ていたという、東大寺が好きな少年だった。
なぜこれほど東大寺が好きなんだろうと自問してみると、東大寺にいると「時空を超えられるから」だそうで、特に写真を撮っていると、一気にその時代に行けると感じるのだそうです。
トップの画像は、展覧会のチラシに使われていますが、大仏様は宇宙というイメージで、本坊での写真展では、宇宙を漂うような展覧会にしたいとおっしゃってました。
中学生のころから、将来は仏像や国宝を撮りたいと思っていた三好さんと入江先生との出会いは大学生の時。
写真を持って行って見てもらって「上手やね」という言葉をいただいて自信をつけたというエピソードから始まった講演は、今回の写真展に出展される写真の、作品ごとに撮影秘話や解説などを交えてお話が進んで、カメラに詳しくなくてもとても楽しく拝聴できました。
展覧会のタイトル「天平の楽園」という通り、天平時代のもののみの写真展。その中で、まず、正倉院宝物を撮影されたお話では、ピントを少しずつずらしながら撮れるカメラで撮影したことなど、お使いのカメラ名なども教えて下さったり。
また、撮影した場所も詳しく教えて下さり、特別な許可がないと撮れないところもありますが、一般の人でも行ける場所もあったりで、季節や時間帯も関係しますが、例えば・・・
戒壇堂の屋根に夕陽の写真は、大仏殿西の「奈良八重桜」植樹の所辺りから。太陽がこの位置に来る季節を狙って見てみたいと思いました。
「奈良八重桜ナラノヤエザクラ」といえば知足院ですが、知足院にも毎日通って開花を待って、800mmの望遠レンズで撮影された一枚が出展しますので、三好さん撮影の美しいナラノヤエザクラも楽しみに拝見したいと思います。
今回の写真展の目玉だとおっしゃる法華堂の内部の写真。
すべての仏さまの目線が集まるところがあるそうで、それは礼堂から。
聖武天皇もここから拝観されたという、その場所から見て、仏様が一番美しく見えるようにつくられているのだそうです。
その他にも、法華堂内では須弥壇から撮った斬新なアングルの不空検索観音像や、宝冠、天蓋、そして執金剛神立像の後ろ姿など、この展覧会でしか見ることが叶わない写真もたくさん出展されています。
戒壇堂の四天王像は夜暗くなってからの撮影。
ライトを数センチずらすだけでずいぶんイメージが変わるそうで、土の中の雲母がきらきらして、四天王像の肌の質感がすごいことや、邪鬼の写真も鬼気迫るものあり。
そしていよいよ修二会の撮影秘話へ。
花拵えの椿は、障子の明るいところへ持って行って撮影されることが多いが、三好さんは、本来の床の間に置かれた状態で撮影され「暗いけれどシャッターを開けておいたら撮れた」というお話や
五体投地の一瞬を写した一枚は、ボケがやわらかく撮れる新しいレンズを使って、感度36000、シャッタースピード3000分の1で撮影。修多羅が丸く撮れた会心の一枚。
そして水取衆が運ぶ担い台からこぼれる水滴まで鮮明に撮れたお水取りの場面は感度72000で撮影。
遠くに大仏殿、近くに菱灯籠も写って、これも会心の一枚。
達陀の写真は3年前に撮影したものだが炎が龍の形をしている。
・・・などのエピソードを大変興味深く伺いました。
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撮影秘話をたっぷりお聞きして、写真展では襖三枚分の大きさにした写真などもあり、その迫力も楽しみな展覧会です。
また、この写真展を記念して写真集「天平の楽園・東大寺」も発刊されます。ほとんどが写真展と同じ写真が掲載されて、巻末には撮影エピソードや作品解説もありで、こちらも楽しみです。
「入江泰吉旧居で写真家・三好和義氏講演会 PartII」は
7/1(日)11:00~12:00 にも開催されます。
こちらでは、6/23の講演会ではお話されなかった、展覧会には出展しない作品などを中心にお話をされるということです。また写真集「天平の楽園・東大寺」も7/3発売に先駆けて販売されます。
三好和義写真展「天平の楽園・東大寺と正倉院」
会期:7月3日(火)ー13日(金)
時間:9:30-17:30(入場は閉館30分前まで/最終日13日は15:00まで)
会場:東大寺「本坊」
拝観料:500円(小学生以下無料)
会期中は連日13時・15時に作品解説のトーク開催(最終日は13時のみ)
ここでは紹介しきれないくらい、たくさんの写真を一枚一枚丁寧に解説してくださいました。写真展でも連日、作品解説トークがありますので、是非お聞きになってください。