先日のことですが、奈良県立美術館で開催中の
「會津八一のうたにのせて−奈良の古寺と仏像」展に行ってきました。
この展覧会は 今年の春から夏、冬と新潟、東京、奈良の三会場で開催されて、私はたまたま、今年の夏の上京の折に、三井記念美術館での
東京展を観る機会を得ました。
東京展では、會津八一ゆかりの奈良のお寺から、それぞれ仏像を中心とした名宝がたくさん出陳し、それはそれは豪華な顔ぶれの見応えのある展覧会となっていました。
その時から、奈良ではどのような仏さまがお出ましになられるのかなぁと楽しみにしていたのですが・・・。
奈良に帰ってから得た情報では、どうも奈良展では仏像はお出ましにならないらしいということで、それでは一体どういう風な展示構成になるのだろうと関心を持っていました。
鑑賞記としての結論から申しますと(比較しては申し訳ないのですが)
東京展では、数々の仏像の素晴らしさに目がいきすぎて、南都諸大寺の特徴等はよく理解できたのですが、今ひとつ「會津八一」について理解できなかった私です。
奈良会場では 「會津八一」初心者の私でも、この方が、奈良の風土や仏教文化をどれほど愛していたか、また八一が奈良で果たした役割などもよく理解でき、とても親しみを感じることができました。
それにしても愛してやまない奈良を歌にのせて表現できるという才能、何と羨ましいことでしょう。
各寺社で詠まれた歌のひとつひとつが、その寺社それぞれの特徴をうまく捉えていて、これ以上の言葉はないと思える程です。
では奈良会場ではどのような展示構成になっているのでしょうか。
図録から画像をピックアップしながらご紹介していきましょう。
何といっても、奈良展では
薬師寺東塔の水煙、金堂の薬師如来台座、東大寺大仏台座蓮弁、
八角燈籠の音声菩薩、興福寺の板彫り十二神将、唐招提寺の勅額
法隆寺鳳凰文光背といった名品の拓影(拓本)が素晴らしいのです。
しをんさんのブログによりますと、今回出展された拓本の多くは
平成11年に新潟市會津八一記念館で開催された
特別展「東大寺龍松院秘蔵拓本展」で公開の
故筒井寛秀コレクションからの展示のようだそうです。
しをんさんも同じように書いてらっしゃいますが
肉眼では見えにくい細部が、拓本では浮き彫りにされ
その美しさをより感じることができます。
また龍松院秘蔵の拓本をこれだけ一堂に見ることができるのは
大変に貴重な機会で、できれば是非この機会にご覧いただければと思います。そして個人的には、できるなら「東大寺龍松院秘蔵拓本展」をいつか企画していただければなぁと思っています。
他には、東大寺の上司海雲師との間で交わされた書簡や
法隆寺金堂壁画の模写、南都諸大寺に伝わる奈良時代の瓦が一堂に会するのも見どころになっています。
また、杉本健吉、入江泰吉、小川晴暘、木内省古といった會津八一と親交を深めた人達の作品や、八一が奈良を知る契機となった工藤利三郎の写真なども。
そうそう工藤利三郎の写真の中に、明治時代の転害門や般若寺があって、今と少し違う様子にちょっと驚いたりしました。
転害門は現在は漆喰の壁が当時は板壁だったし
般若寺にはまだコスモスが植えられていなかったのですね。
小川晴暘さんの写真の中には
盗難に遭う前の、新薬師寺の香薬師立像の貴重な写真もありました。
展示品の中にはこういうような自分の中のツボ!と
思えるものもあって、會津八一のうたを通して奈良の古寺の魅力を
あらたに再発見できた展覧会でした。
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「會津八一のうたにのせて−奈良の古寺と仏像」
奈良県立美術館にて12月19日(日)まで開催中(月曜日休館)
午前9時〜午後5時( 入館は閉館の30分前まで)
金・土曜日は午後9時まで開館していますので是非どうぞ!