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2011年2月14日月曜日

東大寺本坊襖絵完成記念「小泉淳作展」

会期終了間際の「小泉淳作展」を観に大阪高島屋に行ってきました。

東大寺1260年の歴史の中で、襖絵の制作は今回が初めてだそうで
本坊40面の襖絵を5年がかりで制作されたのは
今年86歳という日本画家の小泉淳作さん。


「東大寺本坊の桜」「吉野の桜」そして”又兵衛桜”をモチーフにした「しだれ桜」の3種類の桜の襖絵12面と、
蕾から枯れていく姿まで、ありとあらゆる蓮の姿を襖16面、長さ20mにもなる大作に仕上げた「蓮池」の襖絵などを一堂に会した展覧会は圧巻の一言でした。

少し前に放映された「日曜美術館」で小泉画伯の制作風景に接することができました。印象的だった場面を思い出してみますと・・・。

蓮の葉の色は天然の岩絵具で描かれているのですが
色の濃さの違うわずか3つの緑色で表現されているだけという。
小泉さんは「少ない絵具でモノを象徴するように描く」 というのが
ご自身の手法だとおっしゃってました。
しかし実際に見てみると、3つの緑色だけで表現されたとは
とても思えないような深い味わいを感じました。

襖絵完成間際に、蓮の葉をもう一度塗り直すという場面があって
「生き生きとした存在感を表すには色の深みが足りない」と
妥協を許さず納得がいくまで絵に向き合う小泉さん。
「綺麗だけでは美しい絵は描けない。存在感があってこそ美しいと感じ
その存在感を引っ張り出すのが画家の仕事」という言葉にも納得。

番組の中で小泉さんは、蓮の花の一瞬の刹那を描いているのではなく
時間の経過を描いているとおっしゃってましたが
蓮の花の一生の、様々な瞬間が描かれた作品からは
一輪一輪の花々がそれぞれの時間を精一杯咲ききっている
という緊張感が感じられました。

そして、枝いっぱいに描かれた桜の花、花、花。
長い歳月、ひたすら描き続ける集中力。
番組の最後におっしゃってた言葉がまた印象的でした。
「あの絵は自分のものじゃない。自分を無にして描いている仕事だから自分のサインを入れない」
「1000年先の人達に、名もなき人が無心の境地で描き上げた絵だと見てほしい」

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この襖絵は4/5から4/10まで東大寺本坊にて一般公開されます。
また、4/8から4/10までの夜間は経庫や桜がライトアップされます。
◇5日~7日は10時~17時、8日~10日は10時~20時
◇受付: 本坊勅使門(南大門北側すぐ)
◇拝観料: 1,000円(中学生以上)
東大寺本坊での公開、本当に楽しみですね!

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さて、展覧会鑑賞記はまだ続きます。(もう少しお付き合い下さい)
実は、春になったら東大寺で見られるのだから
わざわざ大阪まで出かけなくていいかな・・・と思ってました。
しかし、行ってよかった!本当に。
この展覧会では奉納の襖絵だけではなく、小泉淳作画伯の
過去の代表作も展示されていて、これが本当に素晴らしい!

特にいいなと思ったのが「三宝柑」と「墨蕪図」。
黒を背景に描かれた作品はすごくクールでモダン。格好良すぎ!
また「牡丹双華」や「蓮華」などは花びら一枚、葉っぱ一枚
すべて透明感のある描き方で繊細で美しすぎるのです。

「生物を象徴的に描いて次元の違うところに到達している」と
番組の中で小泉さんの作品が評されていましたが
本当にそうだと思いました。丹念にデッサンされて描かれた
具象の極地のような作品から匂い立つのは
現代アートに感じるスタイリッシュな斬新さなのです。

これだけ饒舌に鑑賞記を記して感動した展覧会でしたが
不思議なことに「聖武天皇御影」「光明皇后御影」や
本坊襖絵のその他の図柄「飛天」「散華」「鳳凰」の作品には
ちっとも魅力を感じないのです。何故なのだろう?
これらを描かれた時の小泉さんの心境も知りたいなと思いました。

「日曜美術館」での特集を見て、画家の人となりを知り
より深く作品を味わうことができました。感謝。