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2017年3月23日木曜日

さようなら「奈良少年刑務所」

3月18日、あるグループの方にお誘いいただいて、今月末で閉庁になる「奈良少年刑務所」の内部見学会に参加致しました。
当日はカメラ撮影可でしたので、刑務所としての最後の姿を記録に残しておかなければと、思いのほかたくさん撮ってしまい、記録用としてブログにも50点以上の写真をアップ致します。
興味のある方は「続きを読む」からどうぞ・・・。



窓のアーチのデザインに見とれながら・・・
定刻に集合したメンバーは2列に整列して人数確認の後、行進をして、説明を受ける部屋(講堂)まで向かいました
講堂から見た若草山・御蓋山・高円山。ここからなら若草山の山焼きも大文字の送り火もよく見え「次にホテルができた時の観光の目玉になるね」と、そんな雑談をしながら説明を受けました。
ちなみに、刑務所内での受刑者の移動は「行進」という形式をとるのですが、これには意味があって、行進していると中でおかしな動きをした人がすぐわかるから。また食事の時には人に分けることを禁止しているのだが、これも食事が嫌いだから人にあげるのか、取られたのかがわからないからで、どちらも受刑者を護るための規則であると、説明の話の中で伺いました。
刑務所の模型で、未決の人が収容されている場所や病人が収容されているエリアなどの説明を聞きました。現在、未決の10人ほどがまだ所内に残っていて、夏までには移送完了となり、完全に店じまい(閉庁)となるのは秋になるということでした。

5棟の舎房が放射状に広がり、その要のところ、2階中央にある監視台から見た様子です。転落防止柵を通して1階の様子も監視できるようになっています。



どこも天井が高く、明りとりの窓からの光で、この日は曇りでしたが、内部は意外に明るいのでした。(この時、照明はついていませんでした。)

監視台から監房へ・・・
創立時のままの木の扉の厚みがすごいです!

独居房内部の様子・・・
用事がある時は中から、黄色の札を落として監視台へ知らせ、部屋に来てくれるのを待つそうです。
こちらは3人部屋です。
相部屋の中のトイレには目隠しの壁があるのですが、上部は外からも見えるようになっています。
この扉は新しく作られたもの。
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こちらは、放射状の舎房の先に新たに増築された実習場。
明治期の創立当時のものではないのですが、この実習場(2棟ある)も重文指定されているのだとか。ここは主に紙もの(金魚すくいのポイなど)をつくる作業場であったそうです。
天井の柱には、建築実習のためにその柱の用途などが記されています。
もう1棟の実習場です。
実習場の窓から見た舎房と、その間には布団干し台が。
赤煉瓦造りの舎房を間近に見ると、百年を経たという古さは微塵も感じさせず、かえって威風堂々とした佇まいに歴史の重みを感じます。
明治期にはなかった水洗トイレの管や電気の配管など。
こういった配管はヨーロッパの建造物にもよく見られますね。
この入口のドアの雰囲気、カッコイイです。
こちらは運動場、その向こうの塀は煉瓦造りではなくコンクリートです。ここは明治の設立当時には塀の外だった場所で、近年になって塀の内側としたため、その付け足した部分がコンクリートの塀となっているのです。
(裏を返して言えば、かつては塀の外に運動場があったということ。また、近年まで受刑者が刑務所の外で勤労奉仕についたりはよくあったことだそうです。・・・例えば東大寺や般若寺での奉仕など←そういう点からも、近隣自治会と共存していたというか近隣自治会が刑務所の活動に理解を示してこられたという経緯があるのです。)
刑務所内には樹齢何年?というような桜の古木がたくさんあって、桜の季節にはそれはそれは綺麗なのだそうです。新しい施設に生まれ変わっても、桜の古木は残してほしいですね。
刑務所内の作業で制作されたものが少し残されています。
「行刑史料」とシールが貼られ廃棄不可となっています。
新しい施設が生まれたときに、法務省側の絶対条件である資料館建設のための史料となるようです。


この積み木は「矯正展」で毎年販売されていて、我が家も二人の孫に買ったものですが、ここで使われている色素は口に入れても大丈夫な植物性色素で、奈良市では誕生した赤ちゃんへのプレゼントとしてこの積み木を贈っているのだそうです。
広い広い作業場がいくつもあって、それが今はもうすっかり片付いています。かつて「矯正展」での刑務所内見学ツアーで見学した際には、工具などがきちんと整理整頓され整然と並んであったことを思い出しています。(その時はもちろん写真撮影厳禁でしたので、その当時の写真はありませんが)
このような作業室の一つに、通信教育で高校卒業の資格を取るための教室がありました。そこを通りながらお聞きした説明では、今年も6名が卒業資格を取れたこと。高校1年2年生に11名が在学していたので、彼らは通信教育が受けられる少年刑務所に移送されたということです。
黄色の扉の小さな建物が理容実習室だったところです。
ここで学んだ実習生は町の人の散髪もでき、刑務所内の「若草理容室」として親しまれていました。
ちなみにこちら↑は、刑務所の門を入ってすぐのところにあった「若草理容室」の理髪券受付所です。
中庭のところどころに作庭したような部分があり
これも受刑者の手によるものだそうです。

受刑者の中には庭師も大工さんもいて、できるだけ自分たちの手で内部の補修をしているそうです。(予算がないという事情もあり)

この建物も建築実習として受刑者で建てたのだそうです。↑
そういえば、明治期にこの刑務所を建てたときも、赤煉瓦は受刑者の手によって焼かれたのでしたね。
赤煉瓦の下の部分が色も濃く、かなり強度のある硬い煉瓦が使われて、建物全体には美しい煉瓦を、外壁にはそれほど美しくない煉瓦が使われているのです。
煉瓦にも色々な種類があることを知りました。

奈良奉行所時代に使われていた牢舎がここに移築保存されています。
この建物は、問題のある受刑者を隔離して収容していたもの。もちろん現在では使われていませんが。
新しい商業施設ができた時に、この建物はアイスクリーム売り場になるのが似合うと思う・・・と、説明して下さっている刑務官の方が楽しそうに話されていました。

刑務所内を一周して、表門の内側に戻ってきました。
窓のアーチの色々なデザインが、見る者を楽しませてくれます。このような建築デザインの美しさは、受刑者の慰めにきっとなっていたことでしょう。
約1時間ほどの見学を終えて、あらためて、美しい建築が持つ力・・・という面について考えさせられました。
表門を表から↑と裏側から↓と。
閉庁になる間際に貴重な機会をいただきありがとうございました。
3年後に生まれ変わったこの建物をまた見学できる機会を楽しみに・・・。