明治41年(1908)に奈良監獄として完成以来、百年以上、今も現役の刑務所として使われ続けている重厚な赤煉瓦建築の「奈良少年刑務所」。
明治日本がその志を世界に誇示するために建設した壮麗な「明治五大監獄」のうち、千葉・金沢・長崎・鹿児島では、一部を除きほぼすべてが解体されて消滅。奈良のみが、その全貌を残しています。
今も生きている美しい建物であり、近代国家として名乗りを上げた日本の歩みの記念碑でもあります。
建築から100年以上が経過して老朽化が進み、改築や取り壊しも検討されていた奈良少年刑務所の建物。
この奈良少年刑務所の建物と歴史を後世に伝えようと、地元自治会長や建築家・研究者・宗教者・作家らの呼びかけで、昨年「奈良少年刑務所を宝に思う会」が結成され(会長には、奈良監獄設計者の孫でジャズピアニストの山下洋輔さんが就任。)建物の保存を求める声を上げてきました。
そんな中、一昨日の朝日新聞ニュースで・・・
奈良少年刑務所について、法務省が今年度で受刑者の収容を停止する一方、建物は保存する方針であると伝えられました。
閉鎖後は民間の管理者を公募して委託することや、文化財の指定を受けて後世に残すことも検討するということです。
奈良少年刑務所は、初犯などの26歳未満の受刑者を中心に収容し、定員は696人。6月末時点で、裁判中の被告を含む405人を収容していて、今年度末までに受刑者を県外の刑務所に移すということです。
何はともあれ、建物の保存が決まってよかったと思います。
「奈良少年刑務所を宝に思う会」設立に奔走された作家の寮美千子さん(寮さんは奈良少年刑務所で、受刑者の再生教育である「社会性涵養プログラム」の童話と詩の担当講師を長年されていて、その授業から生まれた作品を「空が青いから白をえらんだのです」という詩集に編集された方です)によると・・・
今後、国有財産のまま、民間業者を募って保存・活用される見込みの建物がどんな施設になるのかはまったく未定です。
そこで、奈良少年刑務所に対して思い入れのある人たちで、「こんな施設になったらいいなあ!」とアイディアを出し合い、イメージをふくらませて、新施設への要望としてまとめていく集まりを開いていきます。
初回は、この日奈良少年刑務所の施設を見学したばかりの近代化遺産関係者の報告を中心に、ディスカッションを行います。
議論の内容は、まとめて、新施設への提案として、法務省に提出します。
ご関心のあるみなさま、ぜひご来場ください。
ということで、早速このような会を企画されました。
「奈良ドリーム刑務所計画 旧奈良監獄の活用を夢みる集い①」
日時:7月29日(金)17:00~
場所:ならまち通信社多目的スペース「れんぞ」
奈良市中辻町1-1ローレルコート奈良1F店舗(「鹿の舟」南向い)
電話:0742-24-4800
参加費:500円
申込:不要
寮さんのフェイスブックにはこのようなアイデアも書かれていました。
中央の大手企業の手に渡り、つまらないショッピングモールなど作られてはたまらない。明治の近代化の象徴として、建物を保存するだけではなく、古くから先進的教育を続けてきた「奈良少年刑務所」としての文化的側面も、ぜひ何かの形で残してほしい。刑務所で行なってきたプログラムは、わたしたちの授業に限らず、非常に価値の高いもので、刑務所に入る前に人々がこんな講義を受けられた人生どんなに助かるだろうかというものだ。そのようなものを体験できる「カルチャーセンター」としての機能も、ぜひ持たせてほしい。
ほかにも、 監房をそのまま使ったプリズンホテルとか、大食堂、本館では洒落たレストラン、人権博物館(加害者と被害者の人権について考える場所)、被害者支援&加害者支援、刑務博物館、図書館、音楽ホール、職業訓練所を利用した工芸教室、奈良の物産販売所、刑務所物産の常設販売所など、さまざまな可能性が考えられる。なにしろ10万平米の広さがある。現在の興福寺の敷地より広いのだ。すばらしい建物(耐震補強が必要だが)もある。わたしたちが「こんな施設に!」と思っていることを、どれだけ汲み上げてもらうことができるか。それは、わたしたちがどれだけ声を上げられるかにかかっているだろう。
妄想膨らむばかりの素晴らしいアイデアの数々。
ご興味のある方は是非ご参加くださいませ。