先日ご宿泊のお客さまから『すみ鬼にげた』という絵本を
教えていただきました。
物語に登場する主人公の「すみ鬼」は唐招提寺金堂の屋根を支える
木彫りの邪鬼がモデルになっているのだそうです。
屋根の下にいて、普段は人目に触れることのなかった四体の隅鬼は
平成大修理(2000~2009年)の時に地上に降ろされて、東京国立博物館で
開催された「唐招提寺展」(2005年)に出陳されました。
絵本の作者 岩城範枝さんは展覧会で見た隅鬼の中で、一体だけ表情の違う鬼に惹かれ、その後、唐招提寺の修理現場まで会いに来られて
泣いているような笑っているような、力の抜けた表情の一体の鬼を
見ているうちにお話が生まれたと、あとがきに書いてらっしゃいます。
絵本を読んで、私も「すみ鬼」に会いたくなり、唐招提寺まで出かけてみました。門を入ると正面に金堂が見えます。
物語の主人公の「すみ鬼」は金堂の西南の隅を支えているのです。
軒下でちょこんと正座して屋根を支えている鬼さん。見えますか?
肉眼では見えにくいので、カメラのズームで見てみましょう。
う〜ん何ともユーモアのある顔。笑っているようにも見えますね。
では、その他の三体の鬼達はどのような表情なのかな?
表情まではわかりにくいのですが、西南の隅の鬼とは様子が明らかに
違うように思えます。
これら三体の鬼は、創建当初のヒノキで作られたもので必死の形相をしていますが、西南の隅の鬼は江戸時代にマツで作られたのだそうです。
絵本の中でも、このような挿絵で表現されていますよ。
挿絵を描かれたのは、奈良県桜井市出身の日本画家 松村公嗣さん。
子供向け絵本の制作は初めてだそうですが、瑞々しい絵の具のタッチや
美しい色彩使いにすっかりファンになってしまいました。
ところで松村公嗣さんのお名前、どこかで聞いたことがあります。
そうそう。「平成おん祭絵巻」を春日大社に奉納された画伯です。
ちょうど今月20日から、春日大社宝物殿にて「平成おん祭絵巻」が公開されますので見に行かなきゃね。(詳細は春日大社のサイト★で)
金堂大修理事業中に、屋根の軒下から外された隅鬼の姿は
こちらのページの一番下の写真で見ることができます。
余談ですが、このような隅鬼は法隆寺でも見られます。
2008年2月に法隆寺を訪れた時のブログ内記事に写真を載せていましたのでよかったらご覧下さい。
絵本『すみ鬼にげた』は小学生低学年から大人まで楽しめます。
この絵本を読んでから唐招提寺に行ってみると、また違った発見があるかもしれませんね。
『すみ鬼にげた』は奈良倶楽部の図書室に置いていますのでご覧になって下さいね。