奈良博で開催中の特別展「白鳳-花ひらく仏教美術-」
7月終わりに前期展示、8月お盆明けに後期展示を観てきました。
奈良国立博物館の開館120年を記念して開催された、長年構想を温めてきた白鳳美術の大規模な展覧会・・・と言われるだけあって、本当にとてもとても素晴らしい展覧会でした。
夏の暑い日中にどこへ行けばいいかと迷ってらっしゃるお客さまにも、「とにかく白鳳展へ、騙されたと思って行ってみて下さい!」と半ば強制的にお奨めしているくらい(そして、お客さまから「お奨めいただきありがとうございました」と喜んでいただいているくらい)の、充実した内容、たっぷりと仏教美術の真髄に触れることができ、高い芸術性に富む展覧会です。
前置きが長くなりましたが・・・もう少し、奈良博のサイトから「白鳳」の定義に付いても触れておきます。
白鳳は7世紀の半ばから710年に平城京に遷都するまでの間の文化や時代を指す言葉として、美術史学を中心に用いられてきました。この時代、天皇を中心と した国作りが本格化し、造寺造仏活動が飛躍的に展開し藤原京には大官大寺や薬師寺、飛鳥の地には山田寺や川原寺など壮麗な伽藍が軒を連ねまし た。新羅をはじめ朝鮮半島の国々との交流は毎年使節が往来するなど盛んであり、大陸の先進的な文化がもたらされました。
白鳳美術の魅力は金銅仏に代表される白鳳仏にあると言って良いでしょう。白鳳仏は若々しい感覚にあふれ、中には童子のような可憐な仏像も見ることができます。神秘性や厳しさを感じる飛鳥彫刻や、成熟した天平彫刻とはまた違う魅力です。
・・・というような予備知識を得て博物館へ!
会場には、白鳳時代を代表する金銅仏がたくさん出陳されていて
これが、どなたもこなたも全て素晴らしくて、素朴ながら完成された美を感じ取れる金銅仏。柔らかくて優しい印象の金銅仏。若々しく清々しい魅力を発している金銅仏。
仏さま 一人一人をゆっくり拝しながら鑑賞している時間は、魅力的なものに初めて出会った新鮮な驚きと、わくわく感とたっぷり滋養を目に留めた至福感で、頭も心も満足感でいっぱいでした。
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帰ってから強く印象に残った仏さまは?と自問してみました。
たくさんいらっしゃるのですが、深大寺の釈迦如来像の姿は忘れられないです。買って帰った図録を見て、またうっとりするくらい。
流れるような衣紋の見事なバランスは計算されているのかなぁ。お顔も洗練された美しさだけれど、流麗な衣紋に覆われた肢体の丸みに完全完璧な美を感じています。
深大寺釈迦如来像と作風が近いとして、新薬師寺の香薬師像の原像の写真↑も展示されていました。やはりさすがに美しい。
その他、兵庫県の鶴林寺や一乗寺の観音菩薩立像など、地方の寺に残る仏さまも素晴らしいです。
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「法隆寺の白鳳」の数々もよかったですね。
特に、阿弥陀三尊像(伝橘夫人念持仏)がお厨子から出されて展示されていたこと。その三尊像が立っている蓮池を表した金銅板や後屏も素晴らしいのです。
法隆寺と言えば夢違観音!
うっとりほれぼれと見惚れているより他なくです。
また法隆寺六観音や、法輪寺の伝虚空蔵菩薩立像には、あどけなさの中に引込まれそうな魅力を感じました。
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薬師寺からお出ましの仏さま方もまた素晴らしかったです。
お寺の中で何度もお目にかかっているのですが、所変われば また違った魅力に気がつくと言うか・・・。
薬師寺の聖観世音菩薩立像↑と月光菩薩立像↓
鑑賞しながら、何度「パーフェクト!」と心の中で叫んだことか。
360度、腰、肩、背中、くびれ・・・その美しさを余すところなく私の目の前に投げ出して下さって。これはもう信仰の対象だけでなく芸術作品ですよね。
聖観世音菩薩立像の後ろの方に薬師寺東塔の水煙が展示され、照明で水煙の影が後ろの壁に投影されて、その大きな影がまるで聖観世音立像の光背のように見える演出も心憎いばかりでした。
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かなり充実した内容に2時間以上集中して見ていると、さすがに最後の方で息切れしそうでしたが、最後にまたツボにハマりそうなものが展示してあって、気持ちを奮い立たせて鑑賞したのでした。古裂好きにはたまらないですよ!これ。
図録より、繍仏裂↑と天蓋垂飾残片↓(どちらもページの右が前期、左が後期の展示)
特に繍仏裂には、中宮寺の天寿国繍帳に通じるものがあり、正倉院御物に遡る7世紀の古裂がこのように見ることができることに感激していました。(どちらも図様の周りを輪郭線で縁取り内部を埋める手法だが、この繍仏裂は両面刺繍で中宮寺のは片面刺繍。)
後期展示では、上の写真の左の残片が出陳されていました。
これは刺繍でも織物でもなく描絵を施されたもの。
黄味がかった薄茶色の綾地は、元は淡い赤色が褪色したもののようですが その上に描かれた白虎の色鮮やかなこと!
図録の解説を読むと、このような描絵の施された天蓋垂飾は正倉院御物にも数点伝わるそうで、これらは法隆寺伝来の古裂であったのですが、献納の際(明治11年に皇室に献納された)一時的に正倉院に留め置かれ一部が正倉院宝物に混入したそうなのです。
幡の残欠を額に貼ったもの。それぞれ鮮明な色、文様にまた溜息。
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語りだしたら止まらない鑑賞記。まだまだいっぱい感想を分かち合いたい気分ですが、もしまだ観に行ってらっしゃらない方は是非是非どうぞお出かけ下さい。
後期に出陳されている「仏頭」は8/27までの特別展示です。
仏頭をお目当てに二度目の鑑賞に出かけました。
360度展開での鑑賞。側頭部や後頭部から、肩や背中や腕、腰までも想像できる素晴らしい造形美を間近で拝まさせていただき、とてもよかったです。
開館120年記念特別展「白鳳-花ひらく仏教美術-」
会期:7/18(土)~9/23(水・祝)
会場: 奈良国立博物館 東新館・西新館
休館日:毎週月曜日 ※8/10(月)・9/21(月・祝)は開館
開館時間:9:30~18:00 ※入館は閉館の30分前まで
※毎週金曜日と8/5〜8/15は19:00まで開館
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追記>> tetsudaさんのブログより
「白鳳展」や奈良博がNHKで取り上げられます。
◆8/22(土)総合テレビ 10:05~10:50
特集番組「白鳳-仏教美術の青春時代-」
番組詳細 奈良国立博物館で開催中の「白鳳展」には薬師寺・月光菩薩立像など名宝150件が展示されている。白鳳時代とは天武・持統天皇の詔により全国で個性的な仏像が大量に作られた時代。
隋・唐や朝鮮半島から最高峰の仏像が伝わり渡来系の工人などによりさまざまな仏像スタイルが開花した「仏教美術の青春時代」である。若々しくみずみずしい白鳳仏の不思議な魅力を漫画家・里中満智子、万葉学者・上野誠などがひもとく。
◆8/22(土)NHK
総合・大阪 7:30~8:00「ウィークエンド関西」
“仏教美術の殿堂”として数多くの収蔵品を保管するだけでなく、全国各地の貴重な文化財の記録、研究も行っている奈良国立博物館の、文化財の記録を長年支えてきた写真撮影事業の舞台裏に迫る。