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2017年6月5日月曜日

「大仏くらべ」奉納狂言と絵本

6/3 東大寺本坊にて、奈良と鎌倉の大仏さまを題材にした創作狂言「大仏くらべ」が上演されました。
本坊の大広間は、桜の頃、小泉淳作画伯が奉納された襖絵の特別公開時に何度かおじゃましている所です。
奉納公演は午前と午後の2回公演され(各回120名の方が鑑賞)、私は午前の部に参加。初夏の本坊に入るのは初めてで、お庭の様子も楽しみに伺いました。
会場に入ると、全面にお庭の緑が目に飛び込んできます。
若草山を借景に、開け放たれた庭園からの爽やかな風と、鮮やかな緑。自然の美しさを存分に楽しませていただきながらの鑑賞となりました。
奉納公演は、上司永照師の司会進行で狭川管長のご挨拶から始まりました。(余談ですが、管長のお話から、この本坊大広間は、戦後昭和22年7月4日にアメリカ独立記念日を祝うGHQが打ち上げた花火よる出火で全焼したことを知りました。)
奉納狂言の前の箏演奏「奈良の四季」では、會津八一の奈良を詠んだ歌が箏歌として取り入れられています。
続いて、能「立花供養」の演出を取り入れた、たて花の花手前を花人・杉 謙太郎さんにより奉納。
そして、いよいよ創作狂言「大仏くらべ」が演じられます。
奈良の男と、東大寺を訪れた鎌倉の男が、それぞれ自分の地元の大仏自慢を繰り広げるのですが、やがて互いの良さを認め合うという物語で
この脚本を書かれた鎌倉在住の大江隆子さんは、40代の時に一念発起して東京芸術大学別科に入学。2年間、能楽囃子を学んだ後、初めて書き下ろした作品が「大仏くらべ」で、初演は12年前。東大寺での上演は3年前に続き2度目だそうです。
奈良の男(シテ)に扮したのは、大蔵流狂言茂山千五郎家当主の茂山千五郎さん。鎌倉の男(アド)は大蔵流山本家、山本則孝さん。
狂言を鑑賞したのはまだ数回という、伝統芸能初心者の私ですが、お二人の演技に何度も笑って本当に楽しい舞台でした。
(上から4枚目の写真は奈良新聞6/4朝刊より、5枚目の写真は当日いただいたパンフレットより。)
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奉納公演中の写真撮影は厳禁でしたので、杉 謙太郎さん奉納の立花の写真はないのですが
公演前に撮影させていただいた、本坊の奥座敷の床の間↑や、お茶席↓にもお花が生けられていました。
狂言鑑賞後は、鎌倉鶯鳴庵 高橋みつ子社中によるお茶席接待があり、鎌倉と東大寺ゆかりのお道具や、大仏さまに因んだ菓子「智徳」などをいただき、眼福口福なひとときでした。
床の間には、本物の大仏さまの螺髪が飾ってあり、鎌倉と奈良では大仏さまの螺髪の巻いている向きが違うと言われていますが、奈良の大仏さまは両方の巻き方向があるそう…などのお話も伺いました。
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そして、この度「大仏くらべ」の絵本も発行されました。
表紙の題字は北河原公敬・東大寺長老、イラストは松田大児さん。
松田さんのほのぼのとした画風と昔話のようなあたたかみのある絵本。

当日は、松田さんもいらっしゃって、嬉しいことに、誕生仏のイラストと名前を書いていただきました。
「大仏くらべ」の絵本は
東大寺大仏殿と東大寺ミュージアム、鎌倉・高徳院、新潟・会津八一記念館の3ヶ所で販売されます。(東大寺ミュージアムの販売開始日は数日後)