若草山に、奈良県がモノレールの設置を検討しているという話を暫く前から耳にはしていたのですが「いくらなんでもそんなバカなこと!」と中々信じられない気持ちでいました。いくら設置したいと思っても「そんなこと許されることではないし、出来る訳ないでしょう!」と高を括ってたと言うか・・・。
ネットでは話題になっているのですが、ネットをしない私の回りの人たちは「若草山にモノレール」のことを知らない人がほとんどで、「モノレールの話、どう思う?」と尋ねると、皆一様にびっくりして「そんなんアカンに決まってる!」という反応。
毎日新聞の記事によると・・・
モノレール導入の目的は、集客増による地域活性化と、高齢者や障害がある人への配慮からだそうですが、景観や文化的価値への影響を懸念する声もあると。
そもそも、観光客誘致という目的で若草山にモノレールを作るという発想が、私には理解できません。かえってこれは奈良のイメージを損なうものと思います。
奈良倶楽部のお客様を始め、奈良を好きな方達の多くは
奈良時代から続く歴史的建造物を含む 広大な奈良公園の自然景観の素晴らしさに心惹かれて、何度も奈良を訪れて下さっています。そのような奈良の宝ともいうべき自然景観の中に、人工的な建設物が設置されることは決して望まれていないと思います。
若草山がよく見える浮雲園地から。
若草山、世界遺産の春日山、ご神体山でもある御蓋山と山々が連なって見えて、思わず お山に向かって深呼吸したくなる場所です。
奈良に暮らす人にとって、若草山は普段の生活の中で
絶えずどこかで目にする親しみのあるお山だと思います。
その山の景観を損なうようなモノレールはやっぱりおかしいです。
実際、想像してみて下さい。
モノレールの終点にも建物が建設される訳ですから、あの山(一重目)の上にぽっかりと箱物が現れるのですよ。
それにモノレールは一重目の山頂までだけで、そこで下りた足腰の不自由な方に「はい景色見て、はい終わり」って、それだけでは味気ないから他に何か休憩所みたいなものも建設するかもしれないですよね。(あくまでも私の邪推ですが)
一重目山頂からの眺望よりは三重目山頂からの眺望の方がダイナミックで素晴らしいのに、どうしてモノレールは一重目だけなのでしょう?
足腰の不自由な方にもというのでしたら、山頂までのバスを復活させてほしいです。その方がずっとバリアフリーでしょう。 (勿論山頂駐車場付近はもっと整備して下さいね)
モノレール導入目的とされる”集客増による地域活性化”は、観光業の私も望んではいますし、若草山の魅力ももっとアピールしたいです。でもやっぱり奈良らしい景観を損なうモノレールはマイナスイメージにしかならないと思います。
若草山の魅力を知ってもらうために、足腰が不自由な方にはバスの利用を、山登りが好きな人たちには、入山料を無料にして一年中いつでも山登りができるようにしてはいかがでしょうか?
山麓のお店でスニーカーやピクニックシートの貸し出しや、それぞれ趣向を凝らしたお弁当の販売、食べ終わった容器を下山した時に回収するサービスとか、毎週末に合同イベントなど企画しても楽しいし・・・。
この際ついでに言えば、
歩行禁止されているドライブウェーにも遊歩道をつけて歩行者もそちらから登れるようにしていただきたいし(全ルートが無理なら、三笠温泉のあたりまででも)そして三笠温泉の前から、クヌギ林の中に以前作られていた遊歩道を整備しなおしていただきたいです。
※クヌギ林の若草山北回りルートはブログのこちらをご覧下さい。
また、若草山に入山口から歩いて登った過去ブログはこちらを。
(一重目からの風景も載せています。)
若草山をよくご存知ない方には一重目・二重目・三重目ってわかりにくいと思いますが、このような山の構造になっています。↓
南側入山口で撮った写真です。↑↓
一重目からの風景。(東大寺が半分かくれてしか見えませんよ)
二重目からの風景↑と三重目からの風景↓
最後になりましたが、12/13(金)18:15〜 MBSテレビ「VOICE」で
奈良・若草山のモノレール騒動が取り上げられる予定です。
地元の観光業者の一人として意見を聞きたいという依頼があって取材を受けました。 どんな風に編集されたか心配ですが、しっかり反対意見は述べておきました。
取材されたテレビクルーの方は一ヶ月に渡って奈良で、このことに対して取材活動をされていて、取材すればするほどモノレールは不要だと感じたとおっしゃってました。
ちょうど紅葉の美しい時に奈良公園を歩かれることが多かったので、奈良の素晴らしい自然環境について、これを壊すことがあってはならないと思われたようです。
モノレールの件は、まだまだ知らない方も多いようで、
賛否両論も含めてもっと議論をしていかなければと思います。
毎日新聞の記事 は「続きを読む」からどうぞ
毎日新聞 2013年10月29日
県の構想では、山麓南側から一重目に続く長さ約600メートル、高低差約100メートルのルートで、観光客の多い東大寺側からは山陰になり景観を損ねず、山焼きの影響も受けない。車両は1両6人乗り(車椅子対応)の2両編成で複線。事業費は2億円と見込んでいる。
導入の目的は集客増による地域活性化。国内屈指の観光地ながら京都や大阪に隣接している事情から、延べ宿泊客は223万人(2012年の観光庁調査)で都道府県でワースト2位。観光客の滞在時間を延ばすとともに、高齢者や障害がある人への配慮から、モノレール案が浮上した。
県によると、法に基づく環境影響評価が必要な開発規模ではないが、景観や鹿など動植物に与える影響を確認する調査を独自に実施中。結果を踏まえて来年度以降に建設の可否を判断する。若草山を含む奈良公園は名勝のため、文化庁に対し、文化財保護法に基づく現状変更の許可申請が必要となる。
28日に県から初めて説明を受けた文化庁の担当者は「本当に必要か議論を」と求めた。今月の県議会で取り上げられた際には「(登山道から見れば)モノレール1があるのは大変な違和感」など懸念の声が出た。
国際日本文化研究センターの千田稔名誉教授(歴史文化論)は「体の不自由な人やお年寄りには、健常者と 同じように眺望を楽しみたい気持ちもあるだろう。長い歴史から生まれた景観と環境に十分配慮するなら一つのあり方では」と理解を示す。奈良女子大の増井正 哉教授(住環境学・歴史遺産保全)は「便利になるのは確かだろうが、若草山は奈良のシンボル。春日山には歴史的・文化的意味がある。奈良公園の将来を巡る議論が必要なのでは」と指摘する。【釣田祐喜】