今日は個人的にファンだった先生の回顧展のご案内です。
奈良市美術館で8/12まで開催中☆
一昨年、84歳でその生涯を終えられた久保先生は
「奈良洋画界の重鎮」といわれていた方。
とにかくお洒落でダンディな先生でした。
10数年前に私が県展に洋画を出品していた頃に審査員をされていて
その先生に「この絵は洒落ていてセンスがいい。好きな絵です」と
たった一言だけの講評でしたが(他の皆さんへの講評はもっと長い)
私にとってはこの上もない言葉をいただいて天に昇った思い出があるのです。今、思い返してみれば「センスがいいか悪いか、好みかそうでないか」という価値基準は、あまりに感覚的すぎますが、実は私も大抵この価値判断で世の中を渡って来たような気がします。・・・まぁそんなことを思い出しながら懐かしい作品を見に出かけました。
先生の作品を知ったのは1995年頃でしょうか。
会場に展示されていた初期から晩年までの作品の中で
90年代から2000年にかけての作品群がどれも際立って好みでした。
幾何学的形にグラデーションの妙、独特のコントラスト。
無駄が一切無くて単純なのだけれど、先生の作品には、どこか温かみがあって静謐な印象も受けます。
一度、制作中のアトリエにお邪魔したことがあるのですが
スプレー等は一切使わず、マスキングテープとタンポで丁寧に油絵具を打ち込んでいく、気の遠くなりそうな手仕事によって描いてらっしゃってびっくりした覚えがあります。
このCompositionシリーズのような絵画は、今の作家さんならコンピューターグラフィックで制作されるかもしれませんね。丁寧な手仕事の積み上げで制作された作品、寡黙に制作に取り組んだ成果だからこそ 温かみや静謐感を感じるのだと、その時に思いました。
晩年にはより一層、作品の色彩が絞り込まれて単純明快になっていきます。「余分なものを消し続けて最後に残ったものが自分」と語ってらっしゃったそうです。
時代とともに変遷された先生の作品を一堂に鑑賞できてよかったです。
「久保晃展」
会場:奈良市美術館(イトーヨーカドー奈良店5F)
会期:8/3〜8/12
開館時間:10:00〜17:30(入館は17:00まで)
観覧料:500円