奈良国立博物館では特別展「頼朝と重源 東大寺再興を支えた鎌倉と奈良の絆」が開催中です。
「奈良博」といえば、秋の「正倉院展」が一般的には有名ですが
博物館好きの方にとっては、春と夏に開催される奈良博の特別展ほど
魅力的な展覧会はないと思います。
今年は春先の「貞慶展」で鎌倉仏教の真髄に触れることができました。
それに続く夏の特別展では ” 平家の南都焼き討ちによって灰燼に帰した東大寺の復興 ” をテーマに、鎌倉時代の仏教世界が展観できます。
展示室はたった2室なのですが、2時間以上の時間をかけてじっくりと観覧した 大変見応えのある中身の濃い(濃すぎる!)展覧会でした。
では、簡単に展覧会の様子をご紹介・・・++
第1章 大仏再興ー仏法・王法の再生ー
第2章 大勧進重源
第3章 大仏殿再建ー大檀越 源頼朝の登場ー
第4章 栄西そして行勇へー大勧進の継承ー
第5章 頼朝の信仰世界ー鎌倉三大寺社の創建と二所詣ー
第6章 八幡神への崇敬
このような章分けによって、東大寺が復興していく様子が臨場感を持って「語られて」います。
「語る」・・・そうこの展覧会はまさに「東大寺復興」という一つの
ストーリーを軸にした物語を語っているのだと思いました。
そして、奈良博ならではの
数々の出陳されているお宝も素晴らしいのですが
その御像や絵巻、お経などを通して、鑑賞している私もその時代を共時できるような気分を味わうことができる・・・という楽しい時間を過ごしたのでした。
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ちょこっと印象深かったのは・・・++(写真は図録より撮影)
「後白河法皇坐像」(重文)・・・
東大寺復興はまず後白河法皇の支援のもとで始まるのですが
こちらの御像はその鎌倉時代からはるか時を経た江戸時代に造立されたもの。気迫に満ちた存在感のあるお姿なのだけれど、NHK大河ドラマ「平清盛」で演じている松田翔太さんを、私もつい思い浮かべてしまうのでした。
後白河法皇の後を受けて復興支援に尽力したのが源頼朝公。
上の「源頼朝像」(国宝)は教科書でお馴染みの肖像画です。
こちらは京都・神護寺のもので、展示は8/19まで。
8/21からは 福岡・聖福寺の源頼朝像(神護寺の頼朝像を模写した
江戸時代のもの)に展示替えされます。↓
図録には二つの頼朝像が掲載されていて、見比べてみても
神護寺の頼朝像は、肖像画の傑作ではと思う素晴らしさです。
後白河法皇像と源頼朝像は向かい合って展示されていて、これについての詳細が、かぎろひさんのブログに書いてあって興味深いです。
また、鎌倉時代の作で頼朝坐像も二像、出陳されていました。
肖像画と少しイメージが違って面白いですね。
「東大寺大仏縁起」・・・
大仏殿炎上の凄まじい様子が描かれている場面と↑
数万の鎌倉武士を従えて大仏殿落慶供養へ参列の頼朝や
警備にあたる御家人達を描いた場面↓
こちらの絵巻、作家の寮美千子さんが言葉を添えて「やまと絵本」として近日中に発売になるものだと思うのですが、ちょっと楽しみですね。
東大寺の復興に尽力した源頼朝公のご縁から
奈良の東大寺と鎌倉の鶴岡八幡宮との関係が深まります。
展覧会では 鶴岡八幡宮からの出陳品も多かったです。
こちらは鶴岡八幡宮の楼門の掲げられている「扁額」
八幡宮の「宮」の下に何やら消した跡のようなものが↑
これは「寺」という字を消した跡だそうで、元は八幡宮寺だったのが、明治の神仏分離の折りに「寺」以下の部分を切り落としたものだそうです。ちなみに「八」の字は八幡神の使いである鳩をあしらってデザインされています。
「国宝 籬菊螺鈿蒔絵硯箱まがきにきくらでんまきえすずりばこ」
この展覧会で一番観たかったのがこの硯箱。(展示は9/9まで)
ポスターやチラシのデザインにも使われていて本当に美しいです!
源頼朝が後白河法皇から下賜されたものを鶴岡八幡宮に奉納したとの社伝を持つ硯箱です。そしてこの内部に納められた水滴の美しいこと!(写真↓の左上のもの)
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また、この展覧会で始めて知った出来事ですが
大仏殿の再建事業を祈念するために、東大寺の僧侶が集団(60名)で伊勢神宮に合計3度も参詣していたことなど、歴史の中の興味深い色々な出来事に触れて、久しぶりに「知りたい!」熱が沸いてくるのでした。
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特別展「頼朝と重源-東大寺再興を支えた鎌倉と奈良の絆-」
平成24年7月21日(土)~平成24年9月17日(月・祝)
詳細は奈良国立博物館のサイトのこちらをご覧下さい。
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8/16から8/21まで、奈良博 仏像館西側の壁面を使って
「ならファンタージア〜 YAMATO 新話 〜」も開催されますので
展覧会とあわせてどうぞお楽しみくださいませ。
先日(8/1)に訪れたとき、奈良博の藤棚には藤の花が咲いていて
ちょっとびっくりでした。