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2013年1月18日金曜日

映画「紫」と、お水取りの椿の色*

先日は大阪十三へ。
江戸時代から続いている京都の染色家「染司よしおか」の5代目当主である吉岡幸雄さんにスポットを当てたドキュメンタリー映画「紫」を見に行ってきました。(注:映画の上映は1/18で終了しています。)

吉岡さんは、先代から当主を引き継ぐ際に、古代の手法のままである天然染料に戻すと決められました。
植物と澄んだ京都の湧き水によって生み出される天然の色からは、化学染料では表現できない深みと美しさが醸し出されています。
でも、現在の地球の気候変化では、そうした染料の材料となる植物が育たなくなってきているということも・・・。

映画では、吉岡さんが、染料の材料を育てる植物農家を説得し、染物植物を栽培するところからかかわっていく姿や、植物だけで染め上げることにこだわり抜く染色家としての生き方、ものづくりのあり方、人間と自然の向き合い方などを、美しい映像で追っていきます。

また、吉岡さんが全幅の信頼を寄せる染め職人・福田さんの、工房での仕事の様子などからは、優雅な色に染め上がった作品からは想像できない厳しい仕事ぶりや職人としてのプライドなども垣間見えて、吉岡さんと福田さんの二人三脚で共に歴史的手法を追求し、伝承させようとする男のロマンのようなものを感じました。

そのような映画の中で、一番興味を持ったのはこちらの椿。

「お水取り」で二月堂須弥壇を荘厳するための椿の花拵えの場面です。
紅花のみで抽出し染色した紅和紙や梔子クチナシで染めた黄色の和紙を代々納めているのが吉岡さんの工房なのです。

練行衆11人で約500個の椿を作り上げる花拵え。
紅色、黄色に染め上げられた和紙はそれぞれ60枚ずつ必要になるそうで
1枚の和紙を染めるのに必要な紅花は1kg、60枚なので60kgの紅花が必要となるのですが、以前からの産地・山形だけでは紅花が足りず、伊賀上野や近年は中国からも取り寄せているのだということ。
また、昔ほど紅花に色を抽出する力が無くて、同じ色を出そうと思うと、今は1.5倍の量の紅花が必要になると仰ってた染め職人の福田さんの言葉も印象的でした。

上の写真はすべて2003年3月発行の「家庭画報」の特集記事から撮ったものです。10年も前の雑誌ですが
東大寺大仏開眼1250年慶讃大法要に際して、吉岡さんが心血を注いで
再現した、植物染めによる天平の彩の世界が、25頁にもわたって特集されていて、今読み返しても勉強になることばかりです。

その年の植物の出来によって、紅色も違ってくるという話に関連して

こちらは以前に S先生からいただいた椿の花ですが
紅花で染められた赤を見比べてみると微妙に違うことがわかります。

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家庭画報の特集ページの他の写真もアップしてみます。






染色家・吉岡幸雄さんを追ったドキュメンタリー映画「紫」を見て
久しぶりに読み返した「家庭画報」・・・。
古代の染色技法によって染め出された美しい色の数々が、大変な苦労と困難の中で生まれでた色であるということがよくわかりました。