毎年春先に開催される奈良博の特別展は、展覧会を見るまではあまり知らない分野のことでも、鑑賞後の満足度がいつも高くて素晴らしい内容のものが多いので、一応必ず見るようにしています。
そして勿論、今回も期待を裏切らない充実した内容でした。
素晴らしい至宝の数々、美しい美術工芸品。そして 誰でも理解できるように工夫された展示の仕方に、また一つ知識の扉を開けてもらえたような充足感を感じています。
「誕生!中国文明」展では、黄河流域に位置する河南省の至宝 約150件が一堂に集められて展示されています。
河南省は中国王朝発祥の地。中国最初の王朝であったといわれる「夏」から、「商(殷)」「東周」「後漢」「魏(三国時代)」「西晋」「北魏」「北宋」などの王朝が河南省に都を置いていました。
「夏」が始まった紀元前2000年頃から「北宋」が滅亡した12世紀頃までの、この地で生まれ発展した中国文明の数々。
それにしても、紀元前2000年って今から4000年も前の時代ですが、古さなどは全く感じない斬新な造形美のものに驚くばかりです。
下のチラシ↓の写真の展示物を見ても濃い内容がわかりますでしょう。
特に、前漢(前1世紀)時代の墓から出土した、薄く板状にした2008枚の玉片を金糸で縫い合わせたという金縷玉衣きんるぎょくい↑は見事です。
玉には永遠に肉体を保つ力があると考えられていて、玉製耳栓や鼻栓の他に、口に含ませる玉が蝉をかたどった美しい造形だったのには驚きました。
死後も豊かな生活ができるようにと墓に収めさせた生活用品の模型や
金工技術の精緻なデザインのもの。迦稜頻伽形合子などの珍しいもの。
唐時代の白磁は朝鮮の白磁がかなりの影響を受けているのだと納得したり。
チラシ表面の竜門石窟の「宝冠如来坐像」↓は今回の目玉でしょうか。
早々に鑑賞された「かぎろひNOW」さんのブログには
高さ2.4m、重さ3トン。奈良博のエレベーターには乗らなかったため、クレーンで運ぶことになり経費もかさんだそうですが、それでも展示したかった・・・
と紹介されています。また瑣末なことですが、展示室の回り方が今までと全然違うのも新鮮な気がしました。青銅器の展示にも圧倒されましたし。
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特別展「誕生!中国文明」は5/29まで。
詳細は奈良博のサイトのこちらをご覧下さい。
中国の青銅器といえば・・・10年近く前に上海へ行った折に初めて入った上海の博物館にも青銅器がたくさん展示されていたのを覚えていますが、こちらの博物館の質の高さにびっくりして、それ以降「博物館」という魅力の虜になった私なのです。