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2015年4月7日火曜日

うつわ文居『豊増一雄〜味わい深き瓷器〜』展

JR奈良駅から三条通りに入ったところ「うつわ文居」で開催中の
『豊増一雄〜味わい深き瓷器〜』展に行ってきました。
昨年の二人展で豊増さんの器に出会って気に入り、今年の作品展を心待ちにしていました。
今回は白磁の他に染め付けの器もたくさん出品されていて、どちらもいいなと迷うところです。
佐賀県有田町にて江戸時代前期の初期伊万里が持つ素朴で温かみのある質感を目指して器づくりに励まれている豊増さん。
作品から懐かしい味わいが感じられるのは、そういう背景があるからなのですね。
普段の食卓にアクセントを添えてくれそうな小皿や小鉢などの他に、中国茶器や煎茶器なども。小さな茶托↓も素敵ですよね。

有田焼の主成分は陶土ではなく陶石。豊増さんの作品は有田特有の泉山陶石で作られています。(泉山陶石は現在は採掘されていないように書かれたweb上の記事もありますが、有田町民であれば今でも申請すれば分けてもらえるということです。)
泉山陶石は他の土を配合の必要がなく、この陶石だけで磁器がつくれるという良質の陶石で、少しグレー味を帯びた色をしています。白磁の釉薬も豊増さんオリジナル、全て単室登窯で焼かれた作品は簡素で素朴な風合いで、まさに目指してらっしゃる江戸時代前期の初期伊万里の持つ特徴と同じです。器を持って触ってみると、つややかでなめらかな肌合いを感じ、これにも惹かれました。
工房の登窯の写真の前で豊増さん。
ところで、作品展のサブタイトルにある”味わい深き瓷器”の「瓷器」ってどういう意味なのでしょうか?
「瓷」とは「磁」の元字で、 枕草子にも「青瓷あおし」「白瓷しらし」の記述があり、「瓷器じき」を「磁器」と表現したのは近年になってからのこと。豊増さんは、あえて「瓷」を使うことで、より原理を求めて焼き物を焼きたいという自分の覚悟を示しているのです・・・とおっしゃってました。

『豊増一雄展 味わい深き瓷器』
会場:うつわ文居
開催期間:4月4日(土)~12日(日)*会期中は無休
時間:11:00 ~ 18:00 (最終日は16:00まで)