〜その1〜からの続きです。
「現代中国の美術」展*鑑賞レポ
会場内や作品の写真撮影は主催者の許可を得ています。
奈良県立美術館の展示室が7室に独立しているのを生かして
各展示室別にテーマを決めて作品展示されています。
テーマ別の絵画を通して現代中国を知る手立てになります。
まず1階の最初の展示室のテーマは「チャイナドリームの実現」
地方から出て来た若夫婦や人夫を描いたもの
地方都市の様子などを表現した作品が多いです。
第2室はこの立体作品のみ。
彫刻部門で日中友好会館大賞を受賞した「ハイチーズ!」です。
総量650kgの合成樹脂と鉄の大作。
家族3世代が集合した等身大の作品に込められたコンセプトって
どのようなものなんだろう。色々想像できる作品です。
ちなみに作者は弱冠28歳。
第3室は他民族国家中国を表現した作品群です。
中国画というジャンルのこの作品。↑
少数民族の衣装が淡いパステルカラーで表現されていて
色調のセンスが好きな作品です。
中国画というのは、日本画とよく似た印象です。
↑こちらはウイグル自治区の作家さんの「投票の後」
また、8mを越す大きな作品も↓(館長さんに説明を受ける5*SEASONさん)
次に2階に進みますと、今までとは違った印象の絵画が並んでいます。
この写真に写っている4作品はどれも中国画で、左から3点は
1970年代生まれの作家による、今の若者風俗を表現したもの。
一番右の作品は1952年生まれの女性作家による「中国の記憶」
この作家は5年前の展覧会で大賞を取った作家だそうで
「書」の力量もある方です。(作品の右端に注目!)
中国画に関して、最後の展示室では
伝統的な中国画と現代的な中国画という対比で見せています。
日本画の花鳥画にも通ずる伝統的な作品↑もあれば
このような現代的な中国画もあり。↓
水墨画も中国画の一つだそうで、この作品「曇りのち晴れ」↑は
ビルに映ったビルを表現したもの。表現対象の着眼点が面白い。
水墨画といえば、このような力作多し。かっこいいです。
その他の展示室のテーマは、建国を讃えるテーマの作品や
大自然がテーマの作品など。
特に自然がテーマの作品は水彩画で描かれているものが多く
そのレベルの高さにもびっくりです。
ところで、この二つの作品↓
どちらが水彩でどちらが油彩か違いがわかりますか?(右が水彩)
中国の水彩画、力強いですよ。
また今回初めて「漆画」というジャンルを知りました。
漆を下地に塗ったものの上に絵を描いているようですが
上に描いている画材は何なんだろう?ここにも漆が使われているような。
とにかく説明が欲しい。漆画の作家は漆芸作家としても独り立ちできる技量の持ち主だそうですよ。
こちらは平面画部門で日中友好会館大賞を受賞した「静寂の故郷」↓
四川大地震が起こった時の時刻のままの時計。瓦礫・・・
社会的なメッセージ性を持つ題材。作家の職業は建築工学の大学教授。
仕事柄現場にも行かれて題材に選ばれたのでしょうね・・・。
急速な経済発展と社会変動。今現在の中国の息吹が伝わってくる作品群。
この5年後に行われる公募展ではどのような作品が集まってくるのだろう。
アートにスポットを当てて見た中国も面白い。
是非是非ご鑑賞下さい!
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最後に美術館への注文を一つ。
私はたまたま今回の鑑賞で館長さん直々に解説を聞く事ができました。
聞けば成る程、面白くてより一層興味も出てきます。
展覧会場でいただける小冊子には、全体像でまとめた解説が
書かれているだけで、作品一つ一つの背景がわかりづらいです。
作品のそばにこのような解説が書かれたキャプションボードがあれば
より一層楽しめると思うのですが、今回そのように提案しても
予算の都合上で切り捨てられてられてしまいました。
学芸員の方が一日に何度か解説ツアーを行うとか
キャプションボードを作るのもそれほど経費がかかるとも思えません。
お金をかけずに色々できることいっぱいあると思うのですが・・。
小冊子には、作家の年齢や職業まで書かれていましたが
作品の題名ボードにも記入されていたらよりよかったと思います。
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「現代中国の美術」展
会場:奈良県立美術館
会期:7/4(日)まで。
開館時間:9:00〜17:00 ※金曜日土曜日は21:00まで延長。
入館は閉館時間の30分前まで。
住所:奈良市登大路町10-6
TEL:0742-23-3968
会期中のイベント:7/4(日)13:30「二胡演奏会」
入館料:大人800円 大・高生500円 中・小生300円
※割り引きチケットはこちらからプリントして
この展覧会はこの後、福岡アジア美術館、富山県立近代美術館、
東京・日中友好会館に巡回予定です。
※会場内や作品の写真撮影は主催者の許可を得ています。
追記:5*SEASONさんのブログでも展覧会の様子がご覧いただけます。