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2012年11月1日木曜日

正倉院展*自分流の楽しみ方

会期2日目の日曜日の夕方に、混み合う時間帯を外して
奈良国立博物館で開催中の「第64回 正倉院展」へ行ってきました。
(ブログの下段に 比較的空いているお奨めの時間帯を書いています)

夕方の仕事の合間時間に出かけたので、大急ぎでの鑑賞でしたが
1000年以上も前のものが、これほど丁寧で繊細でデザイン性に優れていて、色彩ひとつ取っても、こういう配色でくるか、とか
精巧な細工の技術も素晴らしいけれど、デザインや色合いなどの美的センス、美意識の高さが素晴らしいと今年も感激しながら鑑賞しました。

そして帰宅してから、買ってきた図録を眺めて
実物ではよく見えなかった細工の細かい箇所に感嘆したり
・・・そういうような楽しみ方をしては喜んでいます。

さて、恒例の・・・
図録から個人的お気に入りをピックアップします。
絵を描いていることもあって、そして布ものが大好きなので
正倉院宝物の古裂の色使いや配色がすごく参考になります。
この靴下の配色の素敵なこと!↑
綴れ織りの細帯も好きな配色で目が釘付けでした。↓


今回の出陳物の中で一番心に残ったのがこちら。
双六盤の入れ物ですが、籐の網代編がとても美しい!

細く剥いだ籐を、紺色と紅色に染めたものと染めないものを交えて、一つの斜格子の中に四つの小花文を配した文様に編んでいるのだそうですが、もうもう実物の網代編みの美しいこと!

そして、こちらが中に入っている双六盤です。
双六盤の壁面には木画で愛らしい文様が表現されています。
緑色に染められた鹿角で花びらを表したり
色々なデザインの鳥たちも可愛い姿ですよね〜。

でも可愛いだけじゃなくて、木画の材に使用しているのは
鳥の頭部は螺鈿、羽根はツゲ、胴部は竹など多種に渡っていて
とても高度な職人技のテクニックが必要なのではと思います。

鳥の文様といえば、図録でも出陳物からアレンジしたデザインがあしらわれています。表紙の折った部分にはこのようなデザイン↓

この鳥達は「密陀彩絵箱」という献物箱の蓋↓に
施された文様よりアレンジされたもの。

こちらとこちらの鳥たちがデザインされています。

ぐわっと口を開いて、なかなかユニークな姿です。

そしてユニークと言えば!こちらの螺鈿紫檀琵琶の背面に見える
ヤコウガイに線刻された迦陵頻迦の何とも言えない表情が秀逸!

聖武天皇ご遺愛の四弦琵琶の背面に、愛くるしくも、かなり脱力系の迦陵頻迦は、肉眼ではちょっと見えにくかったのですが、壁面パネルの拡大写真を見て、一瞬 目が点になってしまうくらいのインパクトでした。

肉眼ではほとんど見えなかったという点では、この孔雀の羽根の先端の羽毛に施されている緻密な線刻も、帰ってから図録でしっかり確認でした。
「銀平脱八稜形鏡箱」・・・細かいところは見えにくかったですが
全体的な形も美しく、もう一度じっくり見ておきたいと思いました。

鳥のデザインでは、この幡に織られた二羽の鴛鴦の表情にも心惹かれるものがありました。
展覧会場で肉眼では目に留められなかったのですが、図録から拾っていくと、他にもあちらこちらに鳥のデザインがあしらわれていますね。


図録の中表紙にも。


瑠璃色のガラスが美しいこの杯は、実際の色目がもう少し紺色に近かったような「紺瑠璃色」というような色目で、こちらももう一度見ておきたいと思っています。

工芸品にばかり力を入れて鑑賞しましたが
「天平役人が部下に宴席を強要した」記述のある文書も出陳されていて話題になっています。天平時代の人達の人間臭さが感じられて1300年の時空を一っ飛びに、奈良時代がとても身近に感じられました。

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さて、仕事柄 お客様に「どの時間帯に行くのが一番いいですか?」とよく尋ねられます。一日の中で割に空いているのではと思われる時間帯は
オータムレイト(閉館1時間半前になってから割安で入館できるシステム)で混みあう時間の、もう30分前に入館するのがいいのではないかと思います。
実は、毎年お客様から聞き取り調査をしているのですが(笑)、今年もこの時間帯の待ち時間0分だという調査結果を引き出しております。
また11月初めにNHK「新日曜美術館」で正倉院展が取り上げられた後は一層混雑しますので、もし行かれるのでしたら、できれば10月中の夕方頃がお勧めではと思います。

それから今年の目玉と称されている「瑠璃坏」ですが
第2展示室に一点だけで展示されていて、こちらを間近で鑑賞するには順番に並ばないといけません。オータムレイトの30分前に入館したら、まず先に第2展示室で瑠璃杯を鑑賞してから第1展示室に戻る・・・というのもいいかもしれません。

以上、かなり自己流な鑑賞記でしたが
最後までお読みいただきありがとうございました。
(トップの画像は、オータムレイトで入場する人の列。)