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2010年9月30日木曜日

奈良県立美術館「花鳥画」〜その②前期鑑賞記

では大役の鑑賞記。
あんまり畏まって書くとかえってわかりにくいので
いつもの調子で、「これ好き〜」とか「素敵〜」レベルのブログで
書いていきます。でも時々、担当学芸員さんに解説していただいた
見どころもご紹介していきますので、長い文章になりますが
どうぞよろしくお付き合いくださいね。
※会場内や作品の写真撮影は主催者の許可を得ています。
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まず第一展示室に入って、あっと驚いたのが この壁画。
「鳥語花香仕女図」唐時代の墓内部の壁画の一部です。
中国からの国外初出品となるそうで、写真ではわかりにくいのですが
仕女の横に花、上部に鳥が描かれています。
こういう唐時代の壁画は「大遣唐使展」にも出陳されていて
高松塚の壁画との保存状態の違い、美しさに感心していたのですが
こちらも漆喰壁が美しい状態で残っています。

この第一展示室は、ほとんどが工芸品で、
主に唐時代(中国)統一新羅時代(韓国)奈良〜平安時代(日本)の
花鳥画・花鳥文様が扱われています。

「花鳥文蓋付三足容器」↑小さくて愛らしくて繊細で・・・。
と、見入っていて、周りを見渡せば。
あれやこれやと正倉院御物のような工芸品が多いこと!
今更ながら、この時代の工芸品の完成度の高さに見蕩れてしまいます。

パンフレットやポスターの写真から、風雅な花鳥画が多く展示されて
いると思い込んでいたのですが、第一展示室の工芸品の美しさに
いきなりテンションが上がってきました。(笑)

そして、こういうような面白い仕掛けも用意されていました。
拡大鏡で覗いて見ると、花鳥文がよくわかります。
これは統一新羅時代の「花鳥文骨装飾」↑
こちらは唐時代の「鍍金花鳥文銅尺」↓
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さぁでは第二展示室へと行きましょう。
こちらでは、中国では南宋〜元時代(13~14C)、
日本では室町〜安土桃山時代(15~16C)の水墨花鳥画が展示されています。

ふわふわした毛並み、中央にぐしゅっと寄った顔。この猿は
猿の名手と言われた牧谿(もっけい)が描いたと伝えられています。
この時代、水墨画を線ではなく面で表現するようになり
日本でも面で描く表現手段が主流となったそうです。

この展示室の圧巻は、何といっても
狩野松栄(狩野永徳の父)による大徳寺聚光院障壁画(国宝)!
仏間仏壇の下の襖絵に、鯰に蓮、小魚、藻などの典型的なモチーフが
描かれているのですが、やはりオーラが全然違うのであります。

他にも、根津美術館所蔵の「芦雁図」など、この時代の水墨画に造詣の
深い方なら目が離せないものがいっぱい。これらは全て前期のみの展示
ですからお気をつけて下さいね。(前期は10/24まで)

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次に第三展示室へ。
こちらでは「院体花鳥画」といって小画面の、一部を近接して細密に
描く花鳥画の展示です。こんな感じ↓
こういう小さな絵は宋時代の中国の画院スタイルだそうですが
日本にもこの流れは取り入れられ、狩野山雪「三鶉図」↓
江戸時代には土佐光起「鶉図」↓
緻密な鶉のまとまり、脇に草花といった構図が一つのスタイルになったようです。

こうして学芸員さんの説明を聞いて鑑賞すると、見過ごしてしまいがちな絵もなるほどと興味深く見ることができ有意義でした。

今回の展覧会ではイヤホンガイドも作品横に解説してある文章も
大変詳しいので、是非ひとつずつ丁寧にご覧下さい。

この部屋には狩野探幽の「臨画帖」(重文)が展示されています。
 

臨画帖とは古画を模写した練習帖のようなもの。
しかしこれ、素晴らしいです。(全期通して展示)

では第四展示室「大画面花鳥画」のコーナーです。


こちらの展示では、何といってもパンフレットに採用された
呂紀(りょき)による「四季花鳥図」(重文)↑(前期のみ)

明時代の画家呂紀の絵の特徴は、
画面前面に地面が斜めに、岩や草花が配置され鳥が大きく描かれ
木が大きく一本(木の先は画面よりはみ出て)樹上に小鳥という
配置が多かったそうで、そういう影響を受けつつ、日本では
もっと余白の美、情緒的なものが画面に強く表現されていきます。

狩野元信の「四季花鳥図」(重文)大徳寺塔頭大仙院所蔵(前期のみ)
水墨画の幽玄な世界と、画面前面だけが控えめに彩色された様子が
険しい景色の中にも艶かしさを感じるというか、眼福の一枚です。

このあと最後の展示室が一階にあります。
同じく「大画面花鳥画」の展示です。

静岡県立美術館所蔵 初期狩野派「四季花鳥図屏風」↓(前期のみ)や



また宮内庁三の丸尚蔵館所蔵の「百鳥図」など、こちらでも
前期のみの展示で素晴らしいものがいっぱい!

これは「 百鳥図」と似た図柄の「聚鳥朝鳳図」↓(前期のみ)
大変おめでたい図柄だそうで見ているだけでも
そんな雰囲気に浸されてしまいました。(単純だけど 笑)
最後に
鈴木其一の「群禽図」こちらも前期のみの展示です。↓

いかがでしょうか?前期だけでもすごいでしょ。
「後期の雪舟・宗達・若冲」だけではないラインナップ!
できれば前期後期と通してお楽しみ下さい。私も後期にまた行きます。

※ローソンでのみ10/24までの期間限定でお得なペアチケット
(2枚2000円)が発売されていますので、こちらをご利用いただくと
2回で600円のお得ですよ。

それから前期後期の展示品目については奈良県立美術館のサイトから
一応見られるのですが、ファイルなので見にくいです。
美術館にお電話して出品目録を郵送してもらうかFAXしていただくか
興味のある方はそういう手立てもありますのでご利用下さい。

それから、今回の展覧会の図録はかなりの素晴らしい出来上がりです。

以上、美術館の広報担当者のような書き方になってきましたが(笑)
久しぶりに県立美術館で本気で堪能したので、つい嬉しくて
テンションの高いレポートになってしまいました。
あくまでも私個人の見解で書きましたのでご了承下さいね。